コンバージョンを高めるための、定性調査の活用方法

2023/01/29 LPOノウハウ CROLPOUX

この記事は、CXLのブログに掲載された記事を翻訳したものです。翻訳元:「How to Use Qualitative Research to Drive Conversions

マーケターがデータを活用してテストの仮説を立てようとすると、多くの場合、デジタル分析を頭に浮かべることでしょう。

しかし、勝利を導くテストの仮説を立てるために、定性調査が何よりも役に立つことは多いのです。

定量的なものは「なに」、「どこ」、「どのくらい」などを伝えてくれますが、定性的なものは「なぜ」を伝えてくれるのです。定性調査の目的は、ユーザー行動の深い理解と、彼らがなぜそのような行動を取ったのかを把握することです。

このようなシナリオを考えてみましょう。

あなたのWebサイトには4つのステップから成るセールスファネルがあります。多くのユーザーは最初のステップでは問題がありませんが、2つ目のステップで脱落してしまいます。

なぜでしょう?

これを明らかにするには、データを分析するだけでは不十分であり、正解を導くことはできません。実際のユーザーが該当のページを見て、去っていく際、何を考えているのかを知る必要があります。そして、その情報を得るための唯一の方法は、ユーザーに直接質問することなのです。

質的な調査により、我々は商品を売ろうとしている人々の心の中を除くことができるのです(バイヤーインテリジェンスによるデータ)。彼らが考えていることを知らなければ、暗闇から抜け出すことはできません。好きなだけ推測することは可能です。しかし、それではあなたはどこに向かうこともないでしょう。

質的調査の進め方の重要性

質的調査には、人との関わりが発生します。

何を、いつ、どのように聞くか。それらはすべて、相手の反応に影響します。あなたを喜ばせるために嘘をつくかもしれません。あなたの質問の構成によって、影響を受けるかもしれません(例:「こちらのほうがより安全に見えるとは思いませんか?」)。

PayPalのグローバル・ユーザー・エクスペリエンス・リサーチチームのマイケル・サマーズ氏は下記のように述べています。

我々が最適化を学習することに影響しうる、2つの重要な認知リソースが存在します。

1.注意
2.外的なモチベーション

UIがコンバージョンをどのようにサポートしているのか、どのような障害があるのか。我々はこれらを理解したいと強く思っています。例えば、小さな花を観察しようとした子供が、虫眼鏡を見ながらその花に近づいた際、誤って太陽の光を集めてしまい、花が焼けてしまったとしましょう。

何かを「研究」しようとする際、我々自身がその障害となってしまうことは、多くあります。

ユーザーが我々のUIやコンバージョンファネルに出会い、ランディングページを閲覧し、選択肢を検討している様子を我々が観察してしまうと、彼らの注意やモチベーションが人為的に歪められてしまうことは考えられます。

その結果、理解力、記憶力、意思決定、作業時間、成功率、失敗率などの値が、非現実的なものになってしまうのです。

こうした理由から、あなたが思う以上に、人々を研究する方法は重要なのです。

一流の専門家が定性調査によってインサイトを得る方法

私はコンバージョン最適化の専門家に連絡を取り、彼らが行う定性調査の方法について質問しました。彼らにとって、最も有効であった調査方法はなにか?また、インサイトを得るために、ユーザーにどのような質問をしているのか?などを尋ねました。

ユーザーテスト

ユーザーテストやユーザビリティテストは、多くの最適化担当者の好むテストです。

コンバージョン率最適化の専門家であるカール・ブランクス氏は、ユーザーテストを高く評価しています。

ユーザーテストをすることで、我々は訪問者がWebサイトとどのように関わっているかを見ることができます。しかし、他にも利点があります。ユーザーテストを行うたびに、我々は人々がWebサイトを利用する方法を直感的に、深く理解することができるのです。そして、ユーザーと共同することで、困難な課題の解決策を探ることもできるのです。長期に渡ってこれほど多くのインサイトを得ることができる手段は、他にはないでしょう。

最適化の第一人者であるクレイグ・サリバン氏は以下のように述べています。

できるだけ早い段階で、製品や新機能のユーザーテストを行うことが、最も有益な方法です。私にとっては、最高のインサイト、製品戦略、勝利をもたらすテスト、優れたアイデア、などが生まれる場所です。

紙に書いた情報やプロトタイプから開始し、フィードバックを受けながら修正し、作り上げていきます。もし、製品の複数の要素において、顧客満足度(例:NPS)やサービス評価を測定しているのであれば、お客様の声や各種フィードバックツールにも注意を払う必要があります。お客様を喜ばせるために投資すべき箇所を特定することは、最適化のプログラムと完全に連動するものです。

管理されたユーザー調査

ユーザーテストは慎重に行われるべきです。時に、テスターに作業をさせているわけではないことを確認するために、テストの管理が必要とされます。

PRWD社ポール・ルーク氏は、以下のように述べています。

ここ15年間、ユーザーテストを行う中で数多くのアプローチやテストの管理方法を見てきましたが、注意深く行わなければ、あなたはユーザー調査を台無しにしてしまうことでしょう。この調査テクニックを使用する場合、正しい準備、正しい人員、正しく管理された方法を用いることが重要です。これらを行うことで、強力でアクションに直結するユーザー行動のインサイトが得られるでしょう。そして、最も強力なA/Bテストの仮説を作り出すことにもつながります。

管理された調査は、「人々はあなたが聞きたいことを述べるものだ」や「これは、人々がいつもどおりにブラウジングする環境ではない」といった批判にさらされます。こうした批判は、適切な設備と、調査をする前に行われる好意的な質問によって、否定することができます。そして、参加者は自らの考えを自然に伝えることができるようになります。また、適度な観察、誘導的でない質問をすることで、彼らの頭の中にある隠された動機について、我々に伝えてくれるのです。

より考慮されたフィードバックとインサイトを参加者から得るためのアドバイスをお伝えします。それは、少なくとも2つの異なるデジタル体験を提供し、それぞれを比較する、ということです。これにより、参加者は自身にとっての本当の課題について考えるようになり、異なる体験の強みと弱みを特定することができます。

管理された調査を行う際、よく見落とされることについて、最後にお話しましょう。それは、あなたのビジネスの基本的な検証とインサイトを得るための方法です。あなたの提案にターゲットオーディエンスが共感し、動機づけを行うことができているかどうかを確認するために調査を行うことは、戦略的なインサイトと競合他社に対する優位性を獲得するための機会となるのです。

PayPalのグローバル・ユーザー・エクスペリエンス・リサーチチームのマイケル・サマーズ氏に再度ご登場いただきます。

あなたのWebサイトのUIについて学ぶための最適な方法は、競合サイトや全く関連性のないタスクと共に、非常に一般的な目的を果たすよう、参加者に依頼することです。

オンラインのタスクを高速で連続して行い、参加者が何の調査をしているのかがわからないようにすることで、人為的に参加者のスピードを弱める可能性が低くなります。また、自然な状況よりも多くを理解してしまうような、外的な動機づけにさらされる可能性も低くなります。

また、ブラインドタスクを行う前に、何も指示を与えず、参加者に自由にオンラインで過ごすように依頼します。ニュースを読んだり、Facebookを確認したりすることで、普段とは違う環境に慣れ、自宅のソファで行うような慣れ親しんだペースで進めることができるようになります。

ライブチャットの履歴

あなたのWebサイトにはライブチャットの機能があるでしょうか?ライブチャットは、コンバージョンを増加させるための、実績のある戦術です。また、インサイトを得るためにも使用することができます。

コンバージョン・サイエンティストブライアン・マッシー氏は以下のように述べています。

ライブチャットの履歴を見ることで、検索をしたくないユーザーが何を探しているのかを把握することができます。また、Webサイトに不足しているものや、見つけるのが難しいことを伝えてくれます。

Wordle.netにライブチャットの履歴を入力してみましょう。頻繁に使用されている言葉を抽出することができ、これは大きなヒントとなり得るでしょう。

顧客、セールスチーム、サポートメンバーへのインタビュー

Content Verve社のコピーライター兼オプティマイザーのマイケル・アガード氏は以下のように述べています。

顧客やステークホルダーへのインタビューは、紛れもなく、あらゆるCROの手法の中でも最も示唆に富む定性調査の1つです。

私の経験上、ターゲットオーディエンスと実際に対話すること以上のものはありません。例えば、顧客に電話をしたり、動画チャットに参加するなどして、実際に会話をするのです。

ここで得られるインサイトに価値をつけることはできません。そして、どんなに多くの定量データであったとしても、同じレベルの理解を得ることは難しいでしょう。

コピーライティングやメッセージの作成において、顧客へのインタビューは非常に示唆に富みます。多くの場合、マーケターが考えるオーディエンスが知りたいことと、ポジティブな購入決定を行うためにオーディエンスが実際に知りたいこととの間には、隔たりがあります。

私はこれまでにいくつかの最適化プロジェクトに携わってきましたが、顧客へのインタビューを行うことで、バリュープロポジションに根本的な欠陥があることが明らかになったことがあります。さらに、こうしたインタビューによって得られた回答が、最適化を成功に導く仮説に大きく近づいたこともあります。

また、カスタマーサービス、サポート、セールスなどのチームのメンバーにインタビューを行うことは、極めて重要です。彼らは多くの時間、顧客と会話しているため、顧客が抱えるWebサイトや製品自体の課題について、深く理解しているのです。さらに、彼らは顧客の意思決定プロセスを熟知しており、最適化における仮説の立案に協力してくれるでしょう。

セールスやカスタマーサービスのメンバーへのインタビューを行う際、私がよく尋ねることは、「(潜在)顧客から尋ねられる質問の中で、最も多い質問を5つ教えて下さい」、というものです。

次に、「そうした質問をされたとき、あなたはどのように答えますか?」、という質問をします。

CROのプロジェクトにおいて、あなたが次に定性調査を行う際、ぜひ、こうした質問をしてみてください。そこから得られるインサイトに、あなたはきっと驚くことでしょう。

顧客へのアンケート

個人的に最も好きな調査の1つに、顧客へのアンケートが挙げられます。アンケートを行う目的は、顧客はどういった人なのか、彼らが求めるものは何か、疑問やためらいは存在するか、どのような言葉を使用しているか、などを把握することです。これらは、コピーライティング、共通の弱みの理解、販売する製品において重要となるもの、などを知るために非常に重要なものです。

アンケートを行うためには、製品を最初に購入した顧客に対し、購入後30日以内(購入の直後であれば更に良いでしょう)に限って行うことが重要です。30日を過ぎてから尋ねてみても、購入する際に何を考えていたかを忘れてしまっているでしょう(そして、でたらめな回答になってしまいます)。

最適なオンライン調査は、複数の選択肢を与えたり程度を尋ねるものではなく、自由形式の質問です。

どういった質問が最適でしょうか?それは、あなたのビジネスやWebサイトによります。しかし、大まかに言えば、下記の4つを理解することが重要と言えます。

彼らは何者なのか:彼らが自身を表す方法に注目しましょう。ペルソナの作成に役に立ちます。
ユーザーインテント:彼らが解決しようとしている具体的な課題は何でしょう?
購買プロセス:製品を選択する際に重要となったもの、どのような比較を行ったのか、どのような(どのくらいの)Webサイトを閲覧したのか、などを確認しましょう。
フリクション:心配、疑い、ためらいなど、購入を決定する前に顧客が感じたものを尋ねましょう。

オーディエンスについて学ぶためには、こちらの記事を参照してください。

Conversion Rate Expertsのカール・ブランク氏は以下のように述べています。

我々は、サインアップをしたり、購入した直後のユーザーにアンケートを実施しています。彼らに尋ねるべき最適な質問は、下記となるでしょう。

・我々から購入をやめようと思ったことがあるとすれば、それは何ですか?
・我々の製品を使用するにあたり、最大の心配や疑問は何ですか?

Webトラフィックの調査

あなたのWebサイトに訪れた多くの人は、何も購入してくれません。しかし、何も購入してくれなかった人からも価値のあるインサイトを得ることができます。

Webトラフィックの調査方法は2つあります。

出口調査:Webサイトから去る際、ポップアップを表示させます。
ページ内調査:特定のページを閲覧した際、アンケートに記入してもらうよう依頼します。

どちらも有効な調査方法です。ここで、どのような質問をすべきでしょうか?我々の目標は、より多くの人にアクションを起こしてもらうことです。そのため、まずはフリクションを理解することから始めましょう。特定のページでユーザーが感じる恐れ、疑問、ためらいは何でしょうか?

ステップ1:そのページで最も求められるアクションを特定する
ステップ2:フリクションについて尋ねる質問を考える

例えば、ECサイトの商品ページの場合、目標はカートに商品を追加することです。そのため、尋ねるべき質問は、「この商品をカートに入れることを妨げるものは何でしょうか?」や「この商品を購入しない理由は何でしょうか?」といったものになります。

ユーザーからの回答をメモしておき、それらをレビューし、そこに潜むテーマを探します。また、顧客へのフリクションについての質問への回答が、Webトラフィックの調査の結果と類似しているかどうかを確認します。こうすることで、インサイトを探し出すことができるでしょう。

多くのユーザーが価格に問題があると答えるでしょう。このような回答が全回答の大部分を占める場合は、不適切なトラフィックを多く獲得しているか、製品の価値を十分に伝えていないという可能性が考えられます。

まとめ

定性調査を行うことで、顧客の心の中を覗き見ることができます。彼らが実際に何を考え、何を、どのように望んでいるのかを知ることができるのです。顧客がWebサイトを離脱してしまう理由や、アクションを起こしてもらうためのモチベーションを高める方法がわからない場合は、定性調査を行うことが、解決の糸口となるかもしれません。

カテゴリー一覧

ABテスト事例 | LPOノウハウ