売り上げを伸ばす、「希少性」を活用した18の事例

この記事は、CXLのブログに掲載された記事を翻訳したものです。翻訳元:「18 Scarcity Examples that Can Boost Sales

「want what you can’t have(人は手に入らないものを欲する)」とは文化的なレトリックですが、それと同時に、何十年間の心理学的調査を土台とした原則でもあります。「希少性」というその原則は、正しく使用されるならば、マーケティング、説得、そして、コンバージョン最適化において、信じられないほど強力です。

しかし、希少性は正しく使用されなければ、まったく意味を持ちません。(むしろ、心理的な反抗を生み、売上に悪影響を与えてしまうかもしれません。)

希少性とは何か?

希少性とは、商品やサービスの利用が限定的な(もしくは限定的と思われている)場合、より魅力的となる現象を指します

これは、「供給が少なく、需要が多い場合、価格は跳ね上がる」という伝統的な経済の理論でも説明できます。
そして直感的にも分かることです。お母さんが「もうこれ以上おもちゃを買ってあげない」と言った場合、もっと欲しくなりませんでしたか?



これは、心理学的な引き金であり、直感的に理解できるものです。しかし、この戦術の背景にあるメカニズムは何なのでしょうか?

なぜ、希少性は作用するのか?

希少性についての最も有名な研究の一つとして、1975年にステファン・ウォーケルによって行われた調査が挙げられます。彼と彼の同僚は被験者に対し、ビンに入ったクッキーを提供しました。片方のビンには10個のクッキーが、もう片方のビンには2個のクッキーが入っています。

それらのクッキーは同じであったにもかかわらず、被験者は2個のクッキーが入ったビンのクッキーをより好みました。

以後、マーケティングにおいて希少性の効果を支持する研究が多く行われました。例えば、2015年の調査論文では、以下のように書かれています。

何かが希少であれば、それは魅力となります。それが高価な宝石であれ、Action Comics(スーパーマンの原型)の初版本であれ。また、商品を珍しいものと見せることで、それをより魅力的にできることを、心理学者は昔から知っています。



なぜ、このようなことが起こるのでしょう。それは、欠落への恐怖(FOMO :the fear of missing out )が大きな要因となっています。



FOMOは、「自分がいない間に、他人が有益な体験をしているかもしれないという不安、またその不安に襲われること」と定義されます。また、「他者が行っている何かに常につながっていたいとする欲望」という特徴があります。

下記の例でもわかるとおり、希少性とは、他者がその商品やサービスを欲していること、また、あなたはそれを手に入れるためにすぐに行動を起こすこと、という前提によって成り立っています。

しかし、FOMOの機能は常に単純なわけではありません。どうやら、我々は非対称的なコントロールも恐れているようです。それは、あなたが手に入らないものを欲する理由となっています。

例えば、このような調査があります。女性が潜在的に理想とする男性の写真を見せられます。片方のグループの女性には、この男性が未婚であると伝えます。もう片方のグループの女性には、交際している女性がいると伝えます。

調査結果はこうでした。独身の男性に興味があると答えた女性は59%でした。しかし、他の誰かにすでに取られている(交際している)と伝えられた場合、興味があると答えた女性は90%となりました。

希少であったり、達成することが困難であったりするものを、我々はより欲しいと思うのです。

かのアリストテレスでさえ、珍しいものに対する喜びを以下のように綴っています。
それが人であれ物であれ、長い間隔でしかやってこないものは喜ばしく、今までのものからの変化であり、さらに、長い間隔でしかやってこないものには希少性という価値があるのだ。


Changingminds.orgも次のように述べています。
不足していないものは、それほど求められたり価値があったりしません。めったに褒めることのない教師からの称賛は、頻繁に褒めてくれる教師からの称賛よりも価値があるのです。

希少性とは、一直線のプロセスではありません。何かがより不足したり、もしくは、不足が解消されたとしても、それに対する欲望が比例的に変化することはありません。

あらゆるものが希少であった場合、希少であること自体が価値を失い、人々はその状態に慣れてしまいます。小売店の調査によれば、商品の30%以上に「セール」のシールが貼られると、その効果は減少するとされています。


それが本当に最後の1つであること、もしくは、この特別な取引はすぐに無くなってしまうという情報を得た場合、我々はそういった商品を購入しやすくなるという傾向があります。ポイントは、それを失ってしまうと本当に信じている場合、我々はそれを手にするためにより早く行動を起こす、ということです。

希少性が作用する場合、しない場合

希少性は常に作用するわけではありません。問題を直ちに解決する特効薬ではないのです。

例えば、研究者は4つの調査で、希少性は下記の条件を満たすとより強力でポジティブな影響を与えることを示しました。

• 説得知識( persuasion knowledge )の顕著性が低い
• 希少性の主張に接する頻度が低い
• 意思決定の可逆性が高い
• 認知的負荷が高い

基本的に、説得の戦略の知識が高く、希少性の主張に接する頻度が多い場合、その商品の希少価値は低くなります。

こちらの調査によれば、「消費者が希少性の主張を営業的な戦略と解釈した場合、その商品の希少性の効果は薄まってしまう」とのことです。

まとめると、希少性の主張が下手で顧客が賢い場合、希少性の戦略は助けになるどころか、悪影響を与えてしまいます。

希少性を活用した18の事例

売上を増やすために活用できる希少性には2種類あります。

1. 量による希少性(例:「この価格の席はあと2つしか残っていません」)
2. 時間による希少性(例:「購入できる最終日です」)

下記に挙げるのは、インターネット上で発見した、希少性を利用した18の優れた事例です。あなた自身で実行するためのインスピレーションを得られるはずです。また、楽しみとして(もしくは警告として)、希少性についての恐ろしい例も挙げてみます。

1. Booking.com

Booking.comは多くの施策で成功していますが、その要因の一つが希少性です。ダブリンのホテルの検索結果を見てみましょう。

ここには、希少性の引き金となる項目がいくつかあります。

• 「当サイトで24時間以内にその日付で2組予約されました」というメッセージは、このホテルを魅力的にします。
• 「当サイトで残り6部屋」というメッセージは、予約の満了が迫っていることを示唆しています。
• 「最後の1部屋をご覧ください」というメッセージは、コール・トゥ・アクションにつながる希少性の役割を果たします。

一定量の空きがあると同時に、ホテルの部屋数には制限があります。こうした情報を正確に、明確に、説得力を持って伝えているbooking.comに賛辞を送ります。

2. Amazon.com

もちろん、あなたもAmazonで買い物をした経験はあることでしょう。また、「残りX点」というメッセージにも気がついているはずです。

「明日必要ですか?」という緊急性を含むメッセージは、すぐにアクションを起こして、目にしている珍しい本が手に入らなくなることを避けたいと思わせる、効果的な手法です。

3. Chubbies Shorts

Chubbies のマーケティングはとても美しく、コピー文、ブランド戦略、ソーシャルでの露出、全てが優れています。また、「期間限定」の商品の希少性を巧みに使用しています。

下記は、彼らが毎年行っている、独立記念日のプロモーションの例です。

彼らは1時間ごとに、購入するともらえる「無料のギフト」をリリースします。この無料のギフトには期限があり、その日の特定の時間のみ受け取ることができます。そのため、あなたがアメリカの国旗を模した水着が欲しいのであれば、すぐに行動を起こす必要があるのです。

4. Chubbies Pt. 2

Chubbiesも時間を軸とした希少性の施策を行っています。

Chubbiesと言えば、独立記念日を思い出します。彼らは先行販売で特別な商品を提供しており、7月4日の直前に到着することを約束しています。

今、アクションを行えば、股下5インチの堂々とした下着を穿くことで得られるであろう注目を逃すことはなくなります。

5. Think Geek

希少性の例として、Think Geek(悲しいことに、2019年に親会社であるGameStopに運営を返還しました)で発見した施策を紹介します。
少々読みづらいのですが、「母の日に間に合う速達があります」という黄緑色のバナー表記があります(駆け込み需要に対応しています)。

6. Ralph Lauren

ラルフローレンはオリンピックの事前オーダーを提供していました。閉会式の前に手にすることが可能です。

7. Badgers Sweet Sixteen

Badgers はスポーツ全般に加え、スーパーボールでの勝利や大逆転劇など、特別なイベントに多数対応しています。それら全てに「期間限定オファー」を出しているため、目にするたびに希少性を際立たせます。

私の大好きな例は、ウィスコンシン大学がザビエル大学を下し16強へと駒を進めた「悲しきビリー・マリー」です。

ただただ、素晴らしい。

8. Bumble

Bumbleは常に希少性のレベルを高めているマッチングアプリです。もともとは、1日のカウントダウンを表示していました(マッチした相手と会話がスタートするまでの時間を表示しています。時間切れになると、その出会いは消滅します)。

また、平等な競争の場とするために、希少性の役割を果たす別の要素も加えています。男性も返信をするのに、24時間という期間を与えられているのです。さあ、ゲームの始まりです。

9. Amazon Prime Now

Amazon Prime Nowをチェックし、オフィスに届けることができる素晴らしい品(その多くはワイン)を見ている途中、優れた希少性の例を発見しました。

お分かりでしょうか?今週の広告は「最大50%。4/30まで。」というものです。時間を設定した素晴らしい希少性の例です。

10. Bobonos

Bonobosは、在庫切れのサイズとスタイルを表示させることで、希少性を上手く利用しています。(正直なところ、この施策を全てのECサイトが行うべきと感じています。) その商品の需要は高く、供給が少ないことを伝える、効果的な方法です。

11. Modcloth

Modclothは説得力のあるトリガーを提示するという意味では、非常に最適化されたWebサイトです。彼らの商品カテゴリーページには、在庫が少ない商品のリストが表示されています。下記の左と中央の商品を見てください。在庫数が赤で表示されています。

12. Modcloth(Part.2)

特定の商品の在庫が補充された場合、そのアラートを出しています。おそらく、非常に人気のため、すぐに棚から姿を消したのでしょう。

13. Modcloth (Part.3)

もちろん、完全に在庫切れの場合にも、それを表示しています。あなたが望む商品が在庫切れになることは避けたいでしょう。そのため、今すぐ買うべきなのです。

14. Marketizator

Marketizator (現在はOmniconvert)は、ランディングページでタイムリミットを伝えるという優れた施策を行っています。彼らとCXLが実施したウェビナーでは、カウントダウンを表示させ、期限を明確に表示しています(ライブイベントであったため)。

15. CXL Live

カンファレンスのチケットを販売する際、各ニュースレターに残りの枚数を明記しています。もちろん、残り枚数が少なくなるほど、チケットの売上は加速します(そのイベントの開催日が近づいていることが理由かもしれませんが)。

16. Frank & Oak

Frank & Oakは「今週のハイライト」としてユニークな商品を提供することで、商品の希少性を認知させる方法を採用しています。

17. Jack Threads

Jack ThreadsはModClothと似た施策を採用しています。これは「新着商品」というセクションですが、レイバンのサングラスが「再入荷」したことを知らせています。

こうすることで、人気のある商品のため売り切れてしまったことを想起させます。この商品が欲しい場合、再び在庫切れになる前に、購入を決断するでしょう。

18. Jack Threads(Part.2)

Jack Threads はこのスムーズなポップアップで来訪者を暖かく出迎えてくれます。

私が「今」サインアップすれば、20%のディスカウントが受けられるのです。ただし、20%オフのクーポンは他の場所でも手にすることができるため、希少性を強く訴求する施策ではないと考えています。

希少性の原則が上手くいかない場合(あなたがすべきでないこと)

希少性は上手く作用します。それが、偽の情報でない限り。

先日、ピープがこの例についてブログ記事を書きました。デジタル商品を販売している男性が、「月間利用は売り切れだが、年間利用は購入可能である」という主張をしたという記事です。

そうです。もちろん彼は、数日後に終了する予定でした。。。

ピープはこう述べています。

Peep Laja:
我々はチャルディーニ著の「影響力の武器」を読んでいる(まだ読んでいないのであれば、すぐに読んで欲しい!)。我々はみな希少性の原則(この価格の残席数はあと4つです)の被害者となったことがある。また、我々の多くがそれをキャンペーンに使用し、成功を収めている。

希少性は非常に効果的だ。希少性の理由があからさまに作られたものでない限りは!デジタル商品への月間のアクセスが「売り切れ」であり、年間のアクセスは購入可能?ちょっとまってくれ!

こんなことをしてしまったら、あなたの信頼はどうなる?人々はあなたを信用しなくなるだろう。これは重要なことだ。


もちろん、商品には価値がある必要があります。全てがあるべき場所にある必要があります。希少性は、説得をするための唯一の手段と考えるべきではありません。明瞭、心の動揺、不安といったものを気にかける必要があるのです。

ジェミー・スミスはこう述べています。

Jeremy Smith:
第一に、あなたが販売するものは、見込み客にとって価値がある、もしくは、重要でなければなりません。価値は、提供する商品やサービスがもともと備えている特徴によって伝えられることもあります。これは、あなたの商品やサービスの 「ユニーク・セリング・ポジション」に内包されます。「ユニーク・セリング・ポジション」は、あらゆるマーケティングの場面で利用される、宣言やセールスポイントです。しかし、本質的な価値もまた、課題となります。本質的な価値は製品やサービスに課されるものであり、マーケティングの全てとも言えるのです。

まとめ

希少性は強力な原則です。しかし、他の全てと同様、その力は施策の方法に依存します。偽の希少性は使用しないでください。
需要が高く、供給が少ない商品の場合、それを正しく伝えましょう。希少性は、操作しようとするのではなく、その現実をしっかりと伝えることが大事なのです。

あなたが今回の記事から何らかのインスピレーションを得られたのであれば、非常に嬉しく思います。

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