CVR改善のためにチームの協力を得るには?

あなたの会社の従業員や構成員が、本当は最適化を成功させたいとは思っていない…少なくとも強い意志で収益面に影響を与えることを考えていない。まさかと思いますが、そういう状況も考えられます。

このことについて、少し考えてみましょう。

誰もが最適化のことを考え、実際にそのように働きかけ、あなたの助力となり、きっと上手くいくでしょう、などと言います。しかしその結果が思っていたようなものでなかった場合、即座にあなたに対して渋面を向けるのです。

悪意があるわけではありません。意識的にあなたに敵意を向けているわけでもありません。しかし彼らは、あなたを責めるようにしてそんな顔を向けるのです。

これは一種の認知的不協和なのです。彼らが想定していた形とは異なる形で現実の形となったため、あなたとその最適化プログラムが受け入れがたい存在のようになってしまっているのです。こういった瞬間や、あるいはプログラムを実施する段階こそ、そのプログラムが成功するか失敗するかが決まる瞬間なのです。こうした認知的不協和は非常に影響力があるものですが、こと最適化ということを考える上では見逃されがちな概念でもあります。

問題を解決するための最初のステップは、それぞれのグループが不満に思っている理由を理解することです。まずは解決するべき問題そのものを理解しなければいけないのです。

チームの顔合わせ

企業内・企業外の従業員の興味関心とあなたの提示する最適化プログラムの成功が常に両立するとは限りません。以下、あなたのチームの構成員がどういう役割を持っているか、その役割に応じてどういう『難しさ』を持っているかを考えてみましょう。

デザイナー

デザイナーの人物画像

デザイナーという人々に関するいくつかの誤解についてはこれまでで既に取り上げていますが、ここでは最適化というものが彼らの仕事にどういった影響を与えるのかということに関して考えていきましょう。

参考1 / 参考2

多くの人は、最適化・CVR改善というものを様々な選択肢を評価しつつ変更がどのように成されていくかを見ていくものであると考えています。中にはテストを行い、その結果から何かを学ぶことでデザインに着目することであると考えている人も居ますが、多くの場合、予想されていなかった結果による認知的不協和を解決する準備はできていません。

実は最近、私自身がこうした認知的不協和を経験した事例がありました。フォントのスタイルテストを弊社サイトで行うことが決まったのです。デザイナーやコピーライター、その他の役職から得られたコンセプトを盛り込み、これまでにないようなものも含み、その試験がより有意義なものとなるようにしていました。

comic sansフォントの画像

その結果、3週間分のデータにより、Comic Sansが、RPV(Revenue Per Visitor:ひとりあたりの売上高)を70%以上向上させただけでなく、その他試験された体験においても非常に良い結果を残すこととなりました。つまりフォントをComic Sansにすることで、70%以上の人にとってより良いユーザー体験を提供できるということがわかったのです。これはまさに最適化・CVR改善に一歩近づいたと言えますが、デザイナー視点からすると、『好ましくないフォント』を利用することでもあります。
(訳注:Comic Sansは、多くのデザイナーからダサいと思われているフォントのひとつです。)

好ましく思えないフォントが実は優れたパフォーマンスを発揮するということが分かったとき、人は『なんとなくそれらしい説明』でその状況に理由を与えようとします。

最適化・CVR改善という面からすると、Comic Sansは『5番のフォント』、つまり数あるフォントのうちのひとつでしかありません。しかし私たちはComic Sansというフォントを生理的に嫌悪しており、美的センスやグッドデザイン、プロフェッショナルなページといったものと調和しないと考えています。そのため、この認知的不協和(自分たちが嫌いなフォントが実は有効であるという現状)に説明を付けなくてはならなくなるのです。

Comic Sansに本質的に問題があるのかと言われれば、答えはノーです。しかしデザインという面からすると、多くのデザインとComic Sansのフォントは非常に相性が悪い。そうすると、テストを行うことによってComic Sansのフォントがより良い選択肢のひとつとなるかと言われれば、答えはノーなのです。テストの結果がもたらしたのは単なる情報であり、それをどう活用するかというのは私たちに委ねられているのです。

もしかするとテストの行い方が良くなかったのかもしれないという『合理的説明』をする人も居るかもしれません。しかし、そうしてテストを重ねても最適化に対する答えは変わりません。こうなるとチームの人員は、あなたの最適化プログラムに対して本能的に嫌悪感を示すようになるのです。

ブランド

「ブランド」という言葉に関する画像

これまでの流れを踏まえて、ブランディングチームの懸念についても考えてみましょう。

ブランディングチームには、当然、何らかのビジョンがあり、それを特定の形で伝えることを目的としています。ほとんどの場合、Comic Sansがその計画の一部として意識されることはないでしょう。しかし、ブランドというものを全体的に管理することはとても難しいことです。むしろブランドがどういうものであるかをコントロールできるのは、ユーザーの方であるということに気付かなくてはなりません。

そのフォントを使えばブランドイメージに傷がつくと感じるかもしれませんが、そういうエビデンスが存在するわけではありません。何かそれらしい理由は思いつくかもしれませんが、あなたの思うエビデンスは、フォントに対する偏見やバイアス、前もって構成された印象によるものです。この時、テスト結果が示す『最適化のための最適解』と比べて、あなたの思う『合理的理由』はどうしても弱いものになってしまいます。確かなのは、より多くの人がサイトを訪れるようになりサービスを体験し、以前には得られなかったヘルプを得られるようになることこそ、ブランドというものの最終的なゴールであるべきだ、ということだけなのです。

開発

デベロッパーを思わせる画像

デベロッパーはサイトを自分の子どものように可愛がっているものです。時間を掛けて作り上げたものを守りたいと思ったり、個人的に愛着があったりするのは当然と言えば当然です。

そのように可愛がっているサイトに対して人為的に変更を行わなければいけないとなれば、当然不快感が生まれることとなります。何かのテストを行った結果を話し合う中で、恒久的な変更を行う必要が出てきたとなったとき、デベロッパーたちが生理的にそれに対して拒否反応を見せてしまう、そんな情景は想像に難くありません。では、サイトのフォントをComic Sansに変更するとなったとき、デベロッパーに賛成してもらうにはどうすれば良いのでしょうか。

ここで重要なのは、デベロッパーのチームというのは、自分たちの行う『開発』というアクションが結果として何をもたらしているかということと無関係になってしまっていることが珍しくないということです。つまりデベロッパーは、アイデアを考え、それを分解し、組み立て、関連させ、次の段階に進めるという一連のプロセスには慣れています。しかし、こうした変更の結果や、ローンチ後の改善の重要なサイクルに対しては関連するという経験をほとんど持たないのです。

上級経営陣

経営陣を思わせる画像

経営陣と呼ばれる人々が皆一様に同じというわけではもちろんありません。

ここで理解しておくべきことは、経営陣の人々というのは、体制やその体制(システム)の中に適材適所に人材を配置することで報酬を受けているということです。そうすると、システムの中で立場を持つ人が自分の役割に疑問を覚えるかもしれないような、人々の信条と相反すること、または大きな変更を加えることに対して、こういった人物が非常に消極的になるのも当然と言えるでしょう。何か明らかに新たな不平不満に繋がりそうなものに対して、こういう立場の人たちがどういう反応をするか考えてみましょう。

こうした人物が欲しているのは『数字』です。しかし彼らは、自分が乗っている船をどこか分からないところに向けて操縦するくらいなら、少なくとも座礁しないようにすることを重要視します。彼らが関心を持つのは将来的な数値というよりも、自分たちが作った企業という世界で自分がどういう立場にあるかということの方なのです。

こういった状況は会社にとってベストとは言い難く、最も恩恵を受けられるのは経営陣たち本人です。彼らはどの選択肢を選ぶべきか慎重になっているのではなく、自分が今座っている椅子を離れたくないのです。ある見方を守ろうとして事実がねじ曲げられるというのは、それにより何らかの利が明らかに存在する場合にはよくあることです。

分析家/既存の最適化アドバイザー

分析家を思わせる画像

この類いの人々からサポートを得るのが最も大変です。こうした人々は自分の考えを強く主張するのみならず、ある程度結果が出ているやり方が既に実践されていると感じてもいるからです。

信念を持っていながらにして全能ぶるようなことがない人々と働くことと、自分が何をしているのかを(本当は分かっていないのに)理解していると考えている人々と働くことは、全く異なる話です。

私たちは、良い結果が得られたら無条件にそれでOKだと信じがちです。しかしこの考え方は、もう少し比較検討することでより良い結果を得られる可能性を全く考慮していない考え方なのです。

ここで、一度これまでの例を振り返ってみましょう。

  • Comic Sansをテストしてみようと最初から思わせるようなデータは無かった。過去の振る舞いを分析したことで、そのフォントの本来の可能性が明らかになったに過ぎない。
  • そのフォントを用いることに何らかの仮説があったわけでもない。もしもただ『これまで上手くいっているから』という理由で何も変えなければ、このフォントを用いることにより得られる結果に近しい情報は一切得られなかったであろうことは間違いない。

ベストプラクティスに従って問題を解決するには様々な方法があるのだということを意識しなければ、自分もあなたが関わる他の人も、得られるものは限定されてしまうことになります。

Comic Sansの例を目の当たりにしたときに多くの人が生理的にしてしまった反応はまさにその問題の一部と言えます。その生理的な反応に対処せずに結果を歪めて解釈すれば、あなたのことをその問題について知識がある人間なのだと覆っている人は、自分たちが感じている認知的不協和は確かに正しいものなのだという確信を得ることになるのです。

具体的な対処法

教育

第一にしてもっとも重要なこと、それが教育です。

教育シーン

私が今の役職に就く前、まさにこうした『実際にはメンバーが最適化を快く思わない可能性』や、『最適化を推進していく上で推進者が敵対視されてしまう可能性』について考える機会がありました。

私は、こうした問題についてあらゆる会話の中で言及し、こういったプログラムにおける問題として誰もが意識するようにしました。この取り組みを通じて、私たちは自分たちが間違っていたということを意識することができたのです。もしもあなたがこうしたことを自分のこととして意識できないのなら、プログラムを実行していくのは難しくなるでしょう。

各部署長と一緒に販売説明会に足を運び、自分たちがどのように行動していくか、それは何故か、具体的に何をしていくかということを話し合いました。そこで私が求めていたのは、認知的不協和を経験するとき、どういった当事者がその場に居合わせるだろうかということを想定するための共通の考え方とその土台を構成することでした。ほとんどの変更は多くの人々にとって受け入れがたいものであるし、結果として最善手として示されたものをその時にあなた自身が良しと思うかどうかすら、定かではないということを意識する必要があるのです。誰かの個人的な不快感よりも、ビジネス全体に対して最適であることを優先して実践できているかどうかということが大切なのです。

事前にグループで話し合う

以上から、『事前にグループで話し合うこと』の重要性が分かってきます。

グループで集まって話し合いをしている画像

私たちは常に、次々に必要となる試験に備えてチームがアイデアやバリアントに投資するようにモチベーションを高めなければなりません。テストというものに制限はなく、あらゆるインプットが大切なのであるということを、チームで理解していなければならないのです。

最適化におけるゴールとは、最も効率的かつ最適と考えられるバリアントの組み合わせを考えることであり、特定のアイデアを他のものに対して特に重要視するということではありません。あらゆるバリアントやインプットについて、それがどのような結果に繋がるかということが分からない以上、あらゆるテストを行うということが重要なのです。

投票

投票をイメージさせる画像

誰もがあらゆるテストに対して意見を持つようにしなければなりません。全てのバリアントを考慮してどういったバリアントが好まれているかを見ることにより、人の意見というものが実際には結果と結びついていないというパターンが分かってくるでしょう。

間違っていることが悪いのではなく、時に人は間違うものだということを全体の理解として得ることが大切なのです。対立するのではなく、チームとして一丸となることが重要です。

エピローグ

以上の内容は、私の実体験でもあります。最適化・CVR改善においてComic Sansが最も優れたフォントであるということが分かった後の数週間はとてもつらいものでしたが、チーム間で何度も話し合いが行われ、最終的にはリーダーの力とこれまでの準備の甲斐あって何とか計画を前に進めることができました。

ある変更が行われるとき、それを誰もが好ましく思うとは限りません。しかし、それでもビジネスにとって最適であるものを選び、共に進んでいくことはできるのです。

以後、私たちはより多くのアイデアをプログラムに取り入れ、結果に対してより多くの人から意見を聞き、似たようなテストをその他のサイトに対して行うことで同様の結果が得られるかどうかを試験してきました。時としてベストプラクティスからかけ離れたものを良いと思ってしまうことがあるということ、そこにはかなりの改善の余地が隠されているかもしれないということを知り、私たちは改めて目を覚まされる思いでした。Comic Sansは確かに優れたフォントでしたし、今では媒介サイトのいくつかで用いられています。

ただ、元々のサイトでは、後々のテストで更により良い(10%の増加)バージョンが判明したため、現在は用いられていません。

最適化とは常に動的なものです。一度最適だと思われたものにこだわってはいけません。

結論

認知的不協和は、最適化というものを考える上で最も解決が困難であり、プログラムそのものを破壊しかねない問題です。

この世界では、およそ90%ものテストが平均して失敗扱いとなります。つまり、期待していたとおりの結果が得られるという確約はどこにもないのです。このズレを解消せずに利点を最大化しようとすれば、そのズレは更に大きくなっていくでしょう。組織としてできることを最大限行い、状況が好転するように行動するだけの意図と深い理解をもって最適化というものを考えなければならないのです。

私たちの場合、労力と努力はそれに見合うものでした。最終的に私たちは、最適化というものに対する不信感や恐怖を、自分たちの成長のために活用することができたのです。優れたリーダーの存在の有無にかかわらず、こうした協調的な状況を作り出し、そのために生産的な準備をしておくことは非常に重要です。最適化というものを考える上では、認識が間違っていることが分かれば、それだけより良い結果を得ることに近づいているのだ、と言うこともできるでしょう。

そうは言っても、組織が抱える課題を最初に認識し、それをどうにかするために対処しようと腰を上げなければ、私たちのプログラムは志半ばにして頓挫、その後再開される見込みは薄かったでしょう。私たち個人は完璧ではありません。しかし組織としてより良い存在になることはできます。それは最適化に向けてと言うことだけでなく、共に対話をしていくことで、チーム全体の強調力や調和を高めていくことができるということです。

結果本位であることや考え方の正しさの証明といった姿勢を改め、共に過程を進んでいくという態度を醸成することで、成功は一部の人間だけでなく、チーム全体の手に委ねられることとなるのです。

この記事は、CXLのブログに掲載された「Your Organization Really Doesn’t Want Optimization To Succeed」を翻訳したものです。

  • ライター紹介
    ConversionXL

CXLは米国Austinを拠点とするLPOのコンサルティング会社。
また、CXLは「CXL Institute」というLPOやWEB解析に特化した、マーケター向けの教育プログラムの運営も行っています。
欧米のデジタルマーケティング業界ではCXLの創設者Peep Lajaの知名度は非常に高く、Peep Lajaは最も影響力の高いLPOスペシャリストとまで言われています。
CXLのブログは定期的にLPO関連の非常に参考となるブログ記事を配信しています。

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