格安フライトという売り込み、ポジティブなレビューなど、遠出に踏み切るどうかに影響を与える明確な要因として考えられるものがいくつか存在する。
しかしそうした中で見落とされがちなのが、その旅行ブランドがどのような言葉使いをしているかということだ。
カナダのデジタルマーケティング企業Unbounceによれば、その旅行ブランドで用いられている言葉使いはコンバージョン率(CVR)に著しい影響を与えるという。
最近のレポートでは、あるページのコピーの1%を見ただけでも、閲覧者に潜在的に怒りや恐怖といった感情を起こさせるということが言われている。
これにより、コンバージョン率(CVR)は最大で25%も下落し得る。
これを念頭に置いた上で、どういった言葉使いをすれば逆に予約率を高めることができるかといったことについて考えたい。
Unbounceの研究では、『感情語彙』と呼ばれるものを用いて、特定の感情と結びつけられる言葉が全体のコンバージョン率(CVR)に影響を及ぼすかどうかを調べた。
この結果分かったのは、怒りや恐怖といった感情と結びつく言葉には強い影響力があり、こうした感情により消費者は予約を完了せずに終わってしまうようになるということだった。
ここで疑問となるのは、怒りを想起させるようなどんな言葉を旅行会社が使うようなことがあるだろうかということだ。しかし実際には、時に消費者自身がネガティブな感情を抱いているということに
自覚的でないままにこうした言葉に触れていることもある。例えば『限定』や『レール』といった言葉は、その文脈と無関係な記憶と結びついたりすることで、消費者に潜在的にネガティブな感情を起こさせるのである。
ともすれば、どうすれば良いかは明白だ。常にポジティブな言葉を使うように心がけるのである。もちろん、言うほど簡単ではない。多くの旅行会社は、定型的な言い回しを使う中でこうした試みに失敗してしまっている。
例えば、鉄道会社Southern Railwaysは悪い例としての好例だ。刺激的な言い回しというよりも消費者の生活において機能的な役割を果たすということを目的としているが、その言葉使いからはポジティブな要素を感じない。
そのホームページには、『アクセシビリティ声明』、『支払い』、『大混乱』など、いかにもネガティブな響きでかつ企業的なワードが並んでいる。
これと対照的に地域鉄道であるC2Cのページを見てみると、非常にポジティブな印象が強く打ち出されている。We’re Open(訳注:意訳的には『ようこそ』を意味。直訳は『私たちはオープンです』)といった言葉が、訪れた人を安心させる。
その行き先について流麗耽美な言葉で惹きつけたいという気持ちはなかなか強いものだが、旅行会社はそのランディングページを簡潔かつ簡略的にするように努める傾向にある。
そこに文章があるとき、その文章は目的を果たさなくてはいけない。決して、空白を埋めるためだけに存在してはいけないのである。ここでもまた、『旅はドキドキワクワクするものだ』という考えから、ついつい過剰に言葉を費やしてしまいがちだ。
宿泊予約サイトBooking.comのホームページには機能的でありながら『おっ』と思わせるようなコピーの好例がたくさん見られる。様々な行き先があるということを示しながら、『リラックス』や『絶景』といった旅の良さを伝えることにも成功している。
一方、Airbnbはビジュアル要素を見せることでストーリーを伝えようとしている。これによりデザインとコピーがミニマル化し、簡潔な内容になっていて理解しやすい。
Unbounceは、旅行会社にとっては『信頼感を与えるような言葉』が効果的であるとも強調している。これは主に、本当にそれが低価格か、そして正当な取引なのかということを心配する消費者が多いためであると説明されている。
調査によれば、全体のコピーの10%を信頼感を与えるためのものとすることで、コンバージョン率(CVR)は20%改善するとされている。
例えば、『シェア』や『フレンドリー』、『オススメ』といった言葉は安心感を与える言葉であると言える。旅行というものを社会活動の一環であるというように捉えることで、ユーザーに対し、その企業が提供しているヘルプやアドバイスが正しい方向に導くものであることを感じさせるのである。
これを実践している好例がHostelWorldで、安心させるような言葉を使うことで、自社を『本当の旅行体験をするための最善の窓口』であると位置づけている。ユーザーの一般的な心配(ホステルの安全性や予約コストなど)を把握し、直接的に対処している。
そのホームページでは、『ヘルプ』や『お助けします』といった言葉が何度も繰り返し使われており、見る人を安心させてくれる。
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