eコマースの小売業者にとって、買い物カゴに入っている商品がチェックアウトされないままに放置されてしまうというのはいまだに大きな問題の一つである。最新の統計では、買い物カゴの放置率は世界で見ると76.9%ともされている。
この放置率をどうすれば低減できるかはEconsultancy’s Ecommerce Best Practiceガイドでも議論が盛んなトピックであり、
これはeコマースにおけるその他重要な分野の問題に分解できる。例えば調査データとランディングページのデザインだ。
ここでは、消費者が一般にオンラインで買い物カゴを放置してしまういくつかの理由、
eコマースのマーケッターがこうした振る舞いにどのように対応しているのかについて集中的に見ていきたい。
ユーザは決済することについてプレッシャーを感じる
チェックアウトのプロセスを独立させることは、買い物カゴの放置率を低下する効果的な方法のうちの一つであると言われている。
別のページに移動するような要素を全て排除することにより、消費者は、注文完了に集中できるようになるのである。
しかしこの戦術にはデメリットもある。まだはっきりと決めていない状態なのに購入を促されているように消費者が感じた場合、サイト全体のパフォーマンスが低下してしまう可能性だ。この感覚は無意識的なものである場合も、もちろんある。しかし、消費者自身の事前調査が不十分な状態で、あるいは購入の心準備ができていないのに、購入を強制されているのではないかと感じれば、それは消費者にとってその場を逃げ出すに充分な動機になり得る。
このことから、消費者をどんどん細い道に追い込んでいくのではなく、必要に応じて元のページに戻れるように配慮するのが良いと考えられる。この時、入力した情報を保持できるようにしておくことも重要である。
例えばチェックアウトの際に他のページに移動したときに戻ってみると先ほど入力したデータをまた入れ直さなければいけないといったことがないように、一時的にデータを保存しておけるようにするのだ。
こうした類いの情報を保存するという作戦を実践している小売業者の例としてWarehouseがある。会計処理前に他のページに移動してしまうということがないようにチェックアウトのページを独立したものにしているが、確認画面までのステップを分かりやすく表示し、消費者にとって今自分がどの段階に居るのかが分かりやすくなっている。
ユーザは買い物カゴを調査のために利用する
大手コンサルタント会社PwCによれば、世界の買い物客の52%がオンラインで服やフットウェアの購入について調査を行うとしており、電化製品になるとその数値は62%、本や音楽、ゲームなら68%になるとされている。
それならば、消費者が買い物カゴに入れた商品を会計せずにサイトを離れてしまう理由も分かる。最も低価格で最もサービスの良いサイトや実店舗を確認して購入するためだろう。
この場合、その当人にとって親身に感じられる、時宜に適ったタイミングでのこちらからの働きかけをすることで、そうした消費者が改めてサイトに戻ってきてくれることを期待できる。
買い物カゴの内容が保存されていることを通知するようなメールを送信するのはこうした効果的な手法のうちの一つだ。この時、個々に合わせてちょっとした調整を入れたメールを送ると更に価値は高まる。
ファッション会社のKate Spadeはこのアプローチを取り入れている。更にその上、放置された買い物カゴで購入を継続すれば15%の割引があるとしてその購入意欲を更に高めようとしているのである。
ユーザはネットではなく、実店舗で買い物をしたい
その他、買い物カゴが放置される理由として、実際に購入するなら実店舗で購入したいからであるという理由もある。この時、実際の購入先の小売業者すら違う場合もあるだろう。このようなケースにおいてはターゲットとして再補足したり買い物カゴが放置されていることをリマインドしたりするだけでは不十分とも考えられる。
この場合には、オンラインでの購入を完了させるのではなく、相手の動機やニーズに合わせ、実店舗での購入を促す方向に活かすのが良い。例えばモバイルで利用できる割引クーポンなどを発行することで利便性や価値を高めるといったインセンティブを用いることで、こうした目的に合わせて戦術を取ることが可能だ。
別の方法としては、チェックアウトのプロセスにおいて実店舗を利用するという別のステップを提示すること、ユーザーがページを離れようとした場合には『この商品を実店舗で探す』や『買い物カゴの中身を欲しいものリストに加える』といった選択肢を提示するというものがある。
これにより場所指定の受け取りを手段として会計を完了したり、実店舗での購入を促したりといったことが可能になる。
服飾の小売業者であるBarbourは、会計時に『後で買う』というオプションを用意している。これにより消費者は、ただ調査をしているだけであってオンラインで購入するつもりがその時点ではなくても、後々に購入する動機を与えられることになる。
ユーザのサイト運用者に対する信頼が欠如する
オンラインでの購入では、消費者はその全体の流れにおいて不安を感じるものである。
この点について、オンラインでの消費者の意見の信頼性を鑑みて、ユーザーレビューにより信頼感を与えるという方法が考えられる。
基本的なレベルにおいて、クレジットカードの情報を提供するということ一つを取ってみただけでも、そのサイトが安全でセキュアであることに確信がなければできることではない。表面的には見えない方法でこれに対応することもできるし、ウェブブラウザについてサードパーティが発行する証明書を獲得することでセキュリティコンプライアンスを遵守していることを示すこともできる。アドレスバーのところに錠前の形で現れるSSL証明書などは、最もよく見られるもののうちの一つだ。
また、消費者は正しい商品を購入したことを確認したいと思うものである。そのため、安心感を与えるためのその他の方法として、持続的に買い物カゴの内容を表示するという方法がある。これによりユーザーは何を買い物カゴに入れたかを確認することができ、その合計金額も分かるし、その確認のために会計処理から抜け出さなくてはいけないということもない。
自転車やアウトドアアパレルの小売業者であるWiggleはこれを実践している一例であり、ユーザーは会計プロセスを通じて何を購入しているのかを確認することができる。
ユーザは配達オプションに関するフラストレーションがある
PRエージェンシーWalker Sandsによる調査によれば、回答者の9割はオンラインショッピングをする上での一番の動機として送料無料を挙げている。ならば予想外に配達コストが高いという場合には、逆に会計をせずにそのサイトから離れてしまう理由になると考えても何の不思議もない。
このようなことが起こらないようにする上で重要なのは、事前に可能な限り分かりやすく配達オプションについて知らせ、会計処理中に途中で気分が変わったり、事前にサービスについて充分な情報が得られていなかったという理由でサイトを離れてしまったりといったことがないようにすることだ。
また、チェックアウトのプロセスにおいて(例えばライブチャットアイコンなどで)消費者の疑問などに答えられるように対応し、これにより分からないことがあったという理由で注文を完了せずに終わってしまうといったことがないようにするというのも良いアイデアだ。
こうしたことを実践している一例として履物のオンライン販売をしているSchuhがある。最初の段階で、どういった配達オプションが良いかを事前に購入者に尋ねるのである。その他、Google Reviewsやセキュアなチェックアウトの保証といった効果的な機能も取り入れている点もポイントが高い。
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