オランダのデジタル代理店であるGreenhouse Groupは、彼らのクライアントである、人気の高い電話・インターネットプロバイダー T-Mobile Thuisのために、今回の価格表示に関する説得力ある研究を行いました。
世界の多くの地域と同様に、オランダでも、標準的なDSL接続を上回る高速インターネットにアクセスできる地域があります。 今回の検証は、T-Mobileの最速プランである500Mbpsのインターネットオプションを選択できるオランダの顧客を対象としていました。 先行調査では、最速のインターネットスピードを利用していたユーザーはほんの一握りでした。そのプランには、複数のデバイスを同時に使用できる機能、 より素晴らしいゲーム環境、高速ファイルダウンロード、4Kテレビの視聴などの多くのメリットがあるにも関わらずです。 最速のオプションであるため、それは最も高価なプランで、T-Mobileにより多くの利益をもたらしていました。 高額かつ最速のオプションである500Mbpsのインターネットパッケージを販売するために、検証チームはいくつかの最適化のアイディアを プレインストーミングしました。その際に、商品を提示する順番を変更するという案が出ました。 元々は、最低速(50Mbps)の最も安価なオプションが先頭に表示されていました。それぞれのオプションが降順で続いており、最速(500Mbps)で 最も高額のオプションは一番下に表示されていました。 ユーザーにまず最も高価なオプションを見せるという考えは直感に反するものに思えますが、 検証チームはアンカリング効果という心理学的な原則を利用しました。 アンカリング効果によれば、人間には認知バイアスがあり、私たちは提供される最初の情報―アンカー(錨)―に強く 頼ってその後の判断や比較を行う傾向があるといいます。
価格比較とその後の判断を行う際に、ユーザーは最初に提示された情報を使用する可能性が高いという事実に基づいて、チームはオプションの表示順を変えることで、 つまり最速で最も高額なオプションを最初に提示することで、ユーザーに最速のオプションが最も魅力的であると感じさせるような アンカリングが行えるのではないかと考えました。
最も高価なオプションを最初に提示することが、それを最も魅力的に感じさせる効果があるかを確実に判断するために、A/Bテストが設定されました。 その検証は37日間にわたって行われました。 トラフィックは半々に分けられ、11,300人以上のユーザーが以下のいずれかのバージョンを閲覧しました。 最も低速で、最安のインターネットオプションをトップに置いたバージョンは次のような外観でした:
また、最速で最も高価なインターネットオプションをトップに置き、最安のものを一番下に置いたバージョンはこのような外観でした: インターネットパッケージの購入は両バージョンで追跡・記録され、合計の注文数は重要業績評価指標(KPI)として測定されました。勝者:最速で最も高価なオプションをトップに固定した【バージョンB】が驚異的な結果で勝ちました。 インターネットオプションを提示する順番をただ変えるだけで、つまり最も高価なものを最初に提示するだけで、 500Mbpsパッケージの購入数は大幅に増加しました。 一番下に表示されていた時には、最速オプションの購入割合は5.35%でした。ただそれを一番上に持ってくるだけで、 購入割合は7.19%にまで上昇しました。これは34.4%ものコンバージョンの向上です。この結果は99%の信頼性を達成しました。 その結果として、安価で速度が遅い50Mbpsと100Mbpsのパッケージの販売は25.3%から22.75%へと減少しました。10.6%という大幅なコンバージョンの低下です。 安価なパッケージ購入率の低下にも関わらず、最も高価なインターネットオプションのパッケージ販売が伸びたおかげで、 全体として注文が14.9%増加しました。この結果は92%の信頼性を獲得しています。 こうした結果は全体として、最も高価なインターネットパッケージを最初に提示することは、その販売数を大幅に増加させるための大きな利点がある、ということを証明しています。
複数の価格オプションがある場合にどの順番で提示するかは、価値の感じ方に大きな影響を与えることがあります。 最安の商品を最初に提示することで、他の利用可能なオプションが比較的高価に感じられてしまい、魅力的に感じられなくなることがあります。 T-Mobileは最安の無料オプションを最初に置いてしまっていたので、消費者は他のすべてのオプションが高額だと感じていました。 たとえ高速インターネットが手に入るとしても、大金を払っても良いと感じる人はほとんどいません。 この価格チャートを見て、同じように感じるかを確認してみてください:
今度は次の価格チャートを見てください: 突然、17.50ユーロがお得なものに感じられるようになりました。そして、他のオプションはそれほど魅力的に見えません。 なぜならインターネットの通信スピードがはるかに遅いからです。 最速で最も高価な選択肢を最初に置くことで、他のすべてのオプションをアンカリングしてしまったのです。 トベルスキーとカーネマンによる研究によれば、認知におけるシフトが起こるのは、ある物の価値を他の類似物との比較を通じて判断しその良し悪しを決定する、という認知バイアスを私たちが持っていることが原因だといいます。 ここにまた別の実例があります。 ネットワーキングウェブサイト「Communo」に掲載されている価格表を見てください: 最初に目に入るものはなんですか? もっとも高価な“Agency+”のオプションが最初に提示されています。 結果として、そのオプションが私たちの価値認知をアンカリングしています。850ドルという価格が他のオプションを判断する 際の参照点となっています。それと比較をすると、他のすべてが安く感じられます。 二番目の“Agency”のオプション―たったの299ドル―がここでは比較的お得なプランに感じられます。おそらくあなたもそれを購入するでしょう。 この認知のシフトにはアンカリング効果が利用されています。 今回は、850ドルのオプションが基準となりました。それによって299ドルという価格が比較的安価なものになりました。 最初に850ドルのオプションが提示されていなければ、今回行われた当然の比較は行われなかったでしょう。 価値の認識をアンカリングしたことも含めて、そのオプションは「おとり効果」としても機能しました。すでにアンカリング効果について知っているので、あなたはそれを使って、価格や販売を最適化することができます。 価格表をフォーマット化する際に、もっとも高価な商品を最初に掲載することが有益かもしれません。 しかし、常に検証を行いましょう。 T-Mobileによる研究が垂直の縦型フォーマットでのアンカリング効果を検証したものであるという点は重要です。 Commun-oのサイトで提示された例は水平の横型フォーマットでした。 あなたのウェブサイトに何かしらの変更を施す前に、価格が水平と垂直に提示された際に、アンカリング効果 がそれぞれ同様に働くかを確認しておくと良いかもしれません。
人々は提示される最初の情報に依存し、その情報と比較をすることで判断を行います。 もっとも高価な商品を最初に提示し、それが比較的安価な類似商品と比較した場合に得であるかを示すことで、購入の決定に影響を与えることが可能です。 というのも、人々は製品の価値を「得られるように感じる割引額」と「その商品の価値が他に提示された商品と比較して得かどうか」に基づいて判断するからです。
今回の検証は認知理論を適切に応用することで、コンバージョンを大幅に向上させることが可能であることを証明しました。 認知理論の文献を読み込んで、検証に応用可能な理論的枠組みがあるかを確認するのも有益かもしれません。
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