1984年、ロバート・B・チャルディーニは『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』という本を出版しました。それ以降、その本はマーケティング分野に強い影響を与えた本として幅広く称賛されてきました。コンバージョン最適化に関わる者にとっては必読書となっています。 この研究書のもっとも重要な項目の一つが「説得力の6原則」であり、その内容は次の通りです。 ・返報性 ・コミットメントと一貫性 ・社会的証明 ・権威 ・好意 ・希少性 この本の出版から30年以上が経ちましたが、この6原則はインターネットマーケティング、特にコンバージョン率に関するビジネスにも応用されてきました。 それはもっともなことです。コンバージョンの本質とは説得だからです。ユーザーが何気なくあなたのウェブサイトを訪問した際に、あなたは彼らを買い物客に変え、 その後購入者になってもらいたいと考えます。 コンバージョンの分野では、どんな些細な説得でさえも重要なのです。この記事では、チャルディーニの説得力の6原則を用いてコンバージョンを向上させる方法について紹介します。
チャルディーニの最初の原則によれば、人間は好意には返礼をして、借りを返す性質があります。つまり、自分がされたように他人にも接するということです。 返報性の概念というのは、人は本質的に、人から好意を受けた場合には、その人に対して譲歩や妥協をしなければならないと感じるというものです。 心理学的には、人間は単純に他人に借りを作りたくないという事実を強調することで、このことを説明しています。 例えばあなたが、人生を改善するための非常に実用的で実行可能な情報を読者に提供している、人気のあるブログを運営しているとしましょう。 こうした情報はすべて訪問者に無料で提供されています。 返報性の考えでは、あなたのブログ読者はあなたのサイトから何かを買わなければならないと感じる可能性が高くなり、 そのことが最終的にはコンバージョンにつながります。 返報性の例 このチャルディーニの原則が実際に使われている好例は、ブライアン・ディーンのウェブサイトBacklinkoです。ディーンのウェブサイトはブログを中心に作られており、そのブログはもっぱら読者に、ウェブマスターやSEOアナリストとしてより成功する方法についての、有益な情報、アドバイス、提案を示すことに特化しています。
コミットメントの原則では、人間は「一貫性があると見られたい」という深い欲求があることが述べられています。そのため、私たちは何らかの物や人に公にコミットした際には、そのコミットメントを実現し最後までやり遂げる可能性が高くなります(そのようにして一貫性を維持しようとします)。 心理学的観点からすれば、このことは、人間は自己イメージと一致するコミットメントを行うという事実によって説明されます。もちろんマーケターは、 このチャルディーニの第二の原則を使ってより高いコンバージョン率を達成する方法を発見してきました。 サイトの訪問者に、ガイドやホワイトペーパーなど何か比較的小さな(ふつうは無料の)ものにコミットしてもらうことで、 そうした訪問者が最終的には自分をそのサイトの顧客だと考えるようになる可能性が高まります。そうした自己認識の変化によって、 その後に有料の製品やサービスを販売することが容易になります。これはフットインザドアのテクニックと似たものです。 コミットメントの例 チャルディーニの第二原則が使われている、印象的で記憶に残る実例が、Copybloggerのウェブサイトです。Copybloggerはブライアン・クラークが 立ち上げたものです。それは人気のブログでありながらも、実際にはソフトウェアと研修を扱う企業で、コンテンツマーケティングの ソフトウェアをCopyblogger Mediaを通じて販売しています。 ホームページを開くとすぐに、企業の無料オンラインマーケティングコースを受講するように促す大きなヘッドラインが目に入ります。 メールアドレスを入力するだけで済むようになっています:
チャルディーニは社会的証明を、人間が他人と同じ行動を取ること、と定義しています。大勢の方が安全だというわけです。 例えば、私たちの同僚が遅くまで働いていれば、私たちも同じようにする可能性が高くなります。もしあるレストランが人であふれていれば、 私たちはその人気のお店を試してみたいと思うでしょう。 私たちは次のような条件がそろった場合に、この原則にさらに影響されます。 ・自分に自信がない ・観察対象の人々が自分と似ている 社会心理学では、この不可避の人間の行為を例証した実験が数多くありますが、古典的なものとしては、1960年のエレベーター実験があります:
権威のある人物が不快な性格で、不愉快な行為を他人に促している場合であっても、なぜ私たちはそうした権威のある人物に従う傾向があるのかと 疑問に思ったことはありませんか?答えは、それが人間の性質だからです! 付帯的な要素、例えば仕事の肩書(〇〇博士)やユニフォームは権威の空気をまとうことで、一般的な人々にそうした人物の言うことを 受け入れさせやすくする働きがあります。このことは、例えば、医者を前面に起用して広告キャンペーンを行っているCM等から明らかです。 権威の例 女性の靴やアクセサリーに特化したShoeDazzleは、この原則を利用しています。同社には共同創立者としてキム・カーダシアンが 携わっており、彼女はShoeDazzleのチーフスタイリストの一人にもなっています。
あなたが誰かのことを好きになると何が起こるのでしょうか?チャルディーニによれば、その行為は、 あなたがその人物から影響を受ける可能性を高くするといいます。これがチャルディーニの第五原則、好意です。 好意は何か似ているものや、身体的な魅力などのより表層的な関心を共有することによって成り立ちます。 この原則は以下のような方法でコンバージョンに応用することが可能です。コンバージョン率を上昇させたい企業は、 素晴らしい“About Us(私たちについて)”ページを作り上げるべきです。 この助言は馬鹿げているように聞こえるでしょうが、その企業の“About Us”は潜在的な買い手に会社のスタッフとその訪問者との類似点 について伝えるチャンスである、ということを理解すれば、その重要性が分かるでしょう。類似性は好意の主要な構成要素であるため、 効果的な“About Us”ページは必要不可欠です。 ではケーススタディをしていきましょう。 好意の例 このケーススタディはPetRelocationという企業についてのものです。彼らは世界中のペットの飼い主がペットを別の国に移動させる手助けをしています。 同社の“About Us”ページにはスタッフの人物紹介が豊富に掲載されており、それぞれの紹介文はスタッフの犬への愛情を強調しているだけでなく、 趣味や他の個人情報を載せることでマネージャーや従業員を人間らしく感じさせています。
チャルディーニの説得力の原則の最後の一つとなりました。希少性は、製品の入手が困難な場合に、それがより魅力的に感じられる現象を指します。 私たちは、商品が「最後の一つ」であることや、「特別価格」がもうすぐ終わってしまうことを知らされると、その商品を購入する可能性が高くなります。 要するに、私たちはチャンスを逃すのが嫌なのです。そして、その恐怖は素早い行動を促す強力な動機づけとなります。 希少性の例 希少性はチャルディーニの原則の中でも最もよく使われているものです。様々な企業がコンバージョン向上のためにそれを繰り返し使ってきました。 これは旅行予約サイトの一般的な戦略です:
こうした説得力の6つの原則は数十年にわたって企業やマーケターによって、消費者であるあなたに支出をさせるために使われてきました。eコマースの爆発的な発展以来、チャルディーニの6原則はその分野にも応用されてきました。 そうした原則に注意を払い、それがどういう原則であるか、それを自分のウェブサイトにどのように応用することができるかを学習しましょう。潜在的な顧客に一つや二つのサンプルをプレゼントすることを渋ってはいけません。あなたの製品があまり長い期間販売されないものであったり、価格が値上がりする予定がある場合は、そのことを彼らに明確に伝えましょう。 適切に使用すれば、コンバージョン率の向上が達成できるでしょう。今行動しましょう、手遅れになる前に!
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