ECサイトのCVR改善に繋がる、20のABテスト事例

必ず上手くいくものなど存在しませんし、一方で絶対に上手くいかないということも滅多にありません。それぞれのウェブサイトには、それぞれの状況が存在するからです。

とはいえ、上手くいくことが多いやり方は存在するものです。以下のテストアイディアは、必ずというほどではないにせよ、それなりに信頼性の高い方法を集めたものです。
当然ながら、結局のところはどのようにアイディアを実践するかというところにかかっています。どんなに優れたアイディアでも、やり方が拙ければ効果を期待することはできません。

以下のABテストから分かった事例は、私たちCXL社のクライアントに基づいた数年による調査の結果として紹介するものです。

ABテスト1. ひとつの静止画の方が自動で回転するスライドよりも効果的である

自動的に様々な画像を見せてくれるスライド形式は、一般的には用いない方が得策です。このスライド形式が静止画を用いるよりも有効であるというケースは確かに存在しますが、非常にまれですし、多くの場合はユーザビリティを大きく損なうことになります。

自動スライドの何が悪いか?

  • 人の目は動くものに反応するので、重要なところへの集中が途切れてしまう
  • メッセージが多すぎると伝わりにくく、逆効果となる(クラッター効果)
  • バナーのように見えるため、広告と勘違いして無視されがちである(バナーブラインドネス)

つまるところ、自動で画像を見せてくれるスライドを導入することで、狙った効果とは真逆の結果を得ることとなるのです。
したがって、シンプルで動かないヒーローイメージと、力強い価値提案のメッセージを用いる方が良いでしょう。以下は、チャットボットの調査サービスを提供するAcquainted社の例です。

Acquainted 価値提案

様々な画像とメッセージをテストして、互いが補完し合うような組み合わせを見つけましょう。

お客様の声:
常に画像が切り替わるのは気が散ってしかたがないし、ちかちかするし、コンピュータ自体がずれていくような感覚があった。
それならば、表示している画像の両端にスクロールするための矢印を取り付け、必要に応じて自分のペースで見られるようにした方が良い。
また、メニューを開いている間にもそのメニュー表示の背景で動き続けるのも問題だった。

ABテスト2. 適切な価値提案は、価値提案を行わない場合に勝る

価値提案とは、提供される価値がどういうものであるかという約束のようなものです。これを期待するからこそ、見込み客はあなたからサービスや製品を購入しようと思うようになります。

Amazonのような大手企業なら、敢えてAmazonがどういったものなのかを説明する必要はありません。しかし多くのeコマース店舗においてはそのような贅沢を言うことはできません。
無名のECサイトを訪問しているユーザーの大部分はそのサイトの名前も聞いたことがないからです。あなたのホームページを訪れた人たちが最初に見るところに価値提案を表示しなければなりません。
また、その価値提案はサイト内のホームページ以外のエントリーページ:商品一覧ページや商品ページに大きく見せる必要があります。

価値提案において伝えるべき内容とは、あなたのブランドが顧客にとって関連性のあるものであるということ、定量化が可能な価値を持っていること、そして他のブランドと比べてユニークな点を持っているということです。

以下の例はPodia社のものです。

Podia

ABテスト3. 連絡先は目立つように

些細なことに思えるかもしれませんが、電話番号やメールアドレスをサイトトップに配置することで、CV率(コンバージョン率)を大きく向上させることができます。

これは信用の問題で、ページの来訪者はあなたに連絡を取ることができるという事実を確認したいのです。これはほとんどのケースで、かなりの価値を追加できるシンプルなプラスアルファであると言えるでしょう。これを実践している好例がZapposです。熱狂的なファンに応えるべく、その連絡先番号を常にトップページに表示しています。

Zappos

ABテスト4. 無料発送の情報を目立たせる

発送料がかかるとなると、途端にCV率が下がることが知られています。

そのため、多くの企業では何らかの形で「無料発送」を提供しており、実質ほとんど全てと言っても良いほどのeコマースサイトがAmazon Primeに対抗するべく手を打っているのが現状です。

もしも発送料を無料にするなら、それをどのように提示するかについて考えるのが良いでしょう。ときには、無料発送にすることで利益を生むというのはおよそ不可能という場合もあるかもしれません。しかし、それでも試すことのできることはいくつか存在します。

  • ベースラインを設定する:無料発送が有り・無しの場合について、顧客転換率を比較する
  • 閾値を作る:無料発送に必要な最低購入価格を設定し、利鞘について改善をテストする
  • 制限を設ける:利益が出る商品を選択した場合にのみ無料発送が可能であるとした場合にどういった改善があるかを見る
  • 価格を上げる:無料発送を実装する上での損失を補える分だけ価格を上昇させ、その場合の利益の比較を見る
  • All Modern

    ABテスト5. 特別価格や特別商品のセクションは分かりやすく

    発送料がかかるとなると、途端にCV率が下がることが知られています。

    様々な研究により、オンラインショッピングをする人たちのおよそ半数は割引商品以外を買わないということ、購入する場合があってもそれは例外的状況であるということが繰り返し示されています。また、およそ60%は、セールや特別商品のコーナーをまず探すとしています。

    あなたのブランドにとって割引という戦略が有効かどうかは分かりませんが、しかし試してみる価値はあると言えるでしょう。

    特別価格が分かりやすい例

    ABテスト6. 広くアピールしたい商品を強調する

    ホームページというものの目的は、ホームページの先にあるページに人々を誘導することです。そのための一番の方法は、閲覧者が興味を持つようなオファーを提示し、それをクリックさせることです。

    例えば、ベストセラー商品やオススメ商品があるなら、それをホームページに表示して強調し、ビジュアル的なヒエラルキー上でも一番目立つようにするのが良いでしょう。

    p
    WineLibrary

    ABテスト7. 検索バーを分かりやすく

    もしも販売している商品の性質的にページ上で検索が用いられることが想定されるなら、その検索バーを大きく分かりやすい位置に配置することで良い効果が生まれるでしょう。例えばAmazonは、検索バーをほとんど中心に配置することでこの効果を実現しています。

    Amazon検索

    ABテスト8. ヘッダーの下に『このサイトで購入するメリット』を表示

    「どうしてわざわざ、Amazonじゃなくてここで買わなければいけないのか」というのは、あらゆるECサイトが答えなければいけない質問です。その答えを分かりやすく表示することで、顧客の購入意欲に影響を与えられるでしょう。

    AdoreBeauty

    ABテスト9. 商品説明をレベルアップ

    商品説明は重要です。商品のコピーの役割は、買い手に充分な情報を与えることにあります。それにより、その商品が自分にぴったりだと確信できるようになるのです。ここでは、説得力よりも分かりやすさの方が重要視されます。

    Amazonの商品説明はこうした点を押さえていて、人間が読むことを想定した適切なテキストにより、商品の特徴をメリットに置き換え、時には比較表まで設置しています。更に技術情報まで掲載されているのです。

    もしもあなたが販売している商品が、あなたが自分で作成しているものではない場合、単に生産者が作った商品説明を繰り返すだけではいけません。あなたなりのパーソナリティや、あなたの目線からのオススメポイントを付与しなければいけないのです。あなたがどうしてその商品をオススメしたいのか、それがどのように役に立つのか、言葉にしましょう。

    ban.do商品詳細ページ

    ABテスト10. 商品の紹介動画を用いて、自動再生を試してみる

    画像は多くのことを伝えられますが、動画の方が一歩先を行っていることを示唆する証拠は数多く存在しています。写真には限界がありますが、実際に商品に触れる一歩手前の段階として、動画は画像には無い効果を生み出してくれるのです。

    もしもまだ商品に関する動画を使ったことがないのなら、少なくとも一部の商品についてだけでも試してみて、その違いを確認してみると良いでしょう。

    例えばZapposは、ほとんど全ての商品について紹介動画を掲載しています。

    Zappos商品詳細ページ

    私たちが独自に行ったABテストでは、動画を自動再生にすることで、より複雑な高額商品にとって良い効果が生まれることが確認できました。

    ABテスト11. チェックアウト時には、まずメールアドレスを確認する

    これは、ショッピングカートが会計前に放置されてしまった場合、リマインドのメールを送ることができるようにするためです。以下の画像は、Amazonでチェックアウトしようとしたときに表示される画面です。

    Amazonサインイン

    フォローアップのメールを送る場合は、できる限り早く送るようにしましょう。もしも他の所で購入してしまったら、それでおしまいです。実際に購入が完了したら、一度か二度程度、フォローアップのメールを送ると良いでしょう。その際にクーポンを付けられたら、尚良しです。そして、こうしたメールの効果(開かれたかどうか、クリックスルー率、顧客転換率など)について追跡しましょう。

    Magentoや3DCart、Volusionなどの多くのECプラットフォームでは、放置されたカートに対する統合的なソリューションを提供しています。また、Rejoinerなど、こうした機能を可能とするようなアドオンソフトウェアが提供されている場合もあります。

    ABテスト12. ショッピングカートの中身を保存する

    人々はそれぞれの店舗を比較しながら商品を購入します。そのため、あるサイトで商品をかごに入れた後、後々になって戻ってくるというのはよくあることなのです。そうして戻ってきたときにカートの中身が無くなってしまっていたら、買う気はきっと失せてしまうでしょう。

    このため、ショッピングカートの中身が保存されるようにするのが得策です。永続的なクッキーを用いることで、買い物かごの中身は一日や一週間程度放置しても残るようになります。

    クッキーを使わない方法としては、ショッピングカートを保存できるようにするという手もあります。ショッピングカートの内容をメールで送信し、リンクを通じて戻ってくることでその中身を再現できるようにするというのも、買い物客の心理を理解した上手なやり方です。

    ABテスト13. 会計プロセスにおいて、明確な『進行度バー』を作成

    人は、自分がどういう状態にあるのかをはっきりと理解できると安心するものです。何かが進行状態にあるとき、それがどれくらい進んでいるのかを知りたいと思うのが人の心というもの。
    だからこそ、リストを作るときにも番号を振った方が好ましく見えたりもするのです。そしてそれは、あなたのサイト上にも同じことが言えます。

    例えば家電小売業者Crutchfieldは、会計プロセスにおいて、その右上に『今、会計のどの段階にあるのか』ということを表示しています。しかし個人的にはこの表示は小さく、多くの場合は見過ごされてしまうのではないかと感じます。

    Crutchfield

    一方、小売業者Crate & Barrelの例では、ステップがより分かりやすくなっていると言えるでしょう。

    Crate & Barrel

    ABテスト14. 購入時に分かりにくい点をはっきりと説明する

    本当に安全か、返品できるのか、いつ商品は届くのか。それがあなたからの初めての商品購入である場合、いくつかの疑問点や不安点があるものです。その全てについて対応しなければなりません。

    よくある『購入時の疑問』や『不安な点』をリストにして、商品ページや買い物かごのページでそれらの疑問について分かりやすく回答しましょう。

    例えばGrouponは、サイドバーで以下のように対応しています。

    Groupon

    ABテスト15. 支払い方法を増やす

    支払いについて様々な選択肢があると、次の2つの理由から有利になります。

    ・個人情報の盗難などといったクレジットカードに関する事件を受けて、オンラインでの支払いにクレジットカードを使いたくないという人が居るため(特によく分からないサイトでは使いたくないと感じるため)

    ・オンラインで2,000人のイギリス人を対象として行った2009年の調査では、普段はオンラインショッピングをしないという人の半数が、普段の支払い方法が使えないと購入をキャンセルすると回答しているため

    こういった人たちは大多数ではありませんが、「PayPal」や「Amazon Payment」といった支払い方法をクレジットカード支払い以外にも追加しておくことで、通常よりも多くの顧客を獲得することができるかもしれないことは確かです。

    例えば、アウトドア小売業者Moosejawは以下のようにして支払い方法を増やしています。

    Moosejaw

    ABテスト16. 長いフォームはカットする

    さて、ショッピングカートに商品を詰め込んで、いよいよチェックアウトだ、となったとしましょう。その後実際に売上に繋がるかどうかというのは、フォームの在り方にかかっています。
    フォームの入力箇所が多いと、それだけ摩擦が生まれてしまうことになるのです。

    これは、多くの人がAmazonから商品を購入する理由でもあります。Amazonでは配送先の住所やクレジットカードの情報が既に用意されているため、フォームを入力しなくても良いのです。たった数分を節約するためだけに少し割高になったとしても構わないというわけです。

    コンバージョン改善施策を専門とするCXL Instituteも、このようにしてフォームの入力の手間を省いています。デモのリクエストフォームの簡易さを見てみましょう。

    Amazon

    例えば、デジタル商品のダウンロードのために配送先住所の入力を求めるような店もありますが、全くの無駄です。また、顧客の肩書きやミドルネームなども全く必要ありません。
    詰まるところ、顧客には本当に必要な情報だけを訊ねよ、ということです。

    ABテスト17. 登録を強要するのではなく、バックグラウンドで追加しておく

    『3億ドルボタン』の話は知っているでしょう。顧客に、サイトへの登録を強要してはいけません。

    そうではなく、必要に応じて登録できるというオプションを提示し、ゲストとしてチェックアウトする場合でもとにかくアカウントは作ってしまうのです。
    なぜなら、メールアドレスや名前の入力はいずれにせよ避けられないからです。注文が完了したら、パスワードを発行し、それをメールでお知らせしましょう。

    小売業者Home Depotはこのやり方を活用し、ゲストとしてチェックアウトするのを第一のオプションとして提供しています。

    Home Depot

    ABテスト18. レビューをもっと目立たせる

    レビューは重要な情報源になっています。ネットではなく現実世界で買い物をしているときでさえ、オンラインのレビューをチェックするのが常なのです。

    オンラインで買い物をする人のおよそ60%は家電用品を購入する前にレビューを確認するとしており、40%は商品についてまずレビューを探さなければ、家電用品を買うことはないとすらしています。
    つまり、レビューを集め、それをサイト上で分かりやすく表示することがとても重要であるということです。

    一般的な商品を販売していて多くのレビューを書いてもらうことが望めない場合、外部サイトからレビューを引用して、それを表示するというのも手でしょう。

    また、ネガティブなレビューがあったとしても削除してはいけません。数が少ないようであれば、そうしたレビューも売上に貢献することが分かっています。

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    ABテスト19. 賢く追加販売を行う

    アップセルやクロスセルを活用することで、一度の注文量を大幅に向上させることができます。例えばAppleは、iPadをカートに追加すると、それに合わせて付属品を紹介してくれます。

    Apple

    アップセルを行う場合は、購入される商品と関連するものを売らなければいけません(例えばAppleの場合、iPadに追加販売するのはスマートカバーであり、iPodではありません)。そして、ショッピングカートに追加された商品よりも少なくとも60%以上安い商品でなければいけません。例えばズボンを購入した人にはベルトをお勧めする、といったような具合です。

    ところで、実店舗においては、あなたが会計待ちの列に並んでいるとき、キャンディなどをその近くに配置することでアップセルの機会を設けています。
    しかしオンラインの場合は、チェックアウトが完了するまでは他のことに気を逸らせるのは得策ではありません。

    ABテスト20. 明確で大きなCTA

    ユーザー体験はスムーズなものでなければなりません。スムーズというのは、何をするべきか、何がどこにあるのか、ということが、常に明らかでなければいけないという意味です。

    例えば『カートに追加』ボタンや『チェックアウト』ボタンがどこにあるのか分かりにくいようであれば、大きく売上を損なうことになるでしょう。
    この2つのボタンは、あなたの店舗サイトで最も重要なボタンです。大きく、大胆に、分かりやすく表示しましょう。テキストリンクは御法度です。

    どういった言葉をCTAのためのテキストとするかといったことや、ボタンの色も重要な要素ではあります。しかし、これについてはテストが必要になるでしょう。ただ概して言えば、ボタンは大きければ大きいほど良いとされています。

    ここで、Patagoniaの商品ページの進化を見てみましょう。2012年と2016年のそれを比較してみると、カートに追加するボタンが赤くなってより目立ちやすくなり、カートの中身を表示するボタンも同色になっていることで更に分かりやすさが増しています。

    Patagonia

    テスト仮説を得るためにユーザーテストを行う

    ECサイトについては、ユーザーテストを実施することを強くお勧めします。それにより、未発見のインターフェイス上の問題が見つかる可能性があるからです。
    例えば特定の商品を探してそれを購入してもらうといったようなタスクを与え、サイトを実際に使ってもらう中で感じたことについて率直な意見をもらいましょう。その様子については、後ろから見ていても良いでしょうし、その様子を記録したものを後々に確認するのも良いでしょう。

    ユーザーテストでは、15人でテストをすると問題の99%を発見することができます。ターゲットユーザー1人についてテストをするだけでも、全くテストをしないよりは遥かに良いでしょう。

    ※翻訳者註
    DLPOではこういったユーザーテストを行う場合は、国内有数の実績を持つポップインサイト社を用いています。

    もう少し量的なデータが欲しいということであれば、ユーザー体験のベンチマークを設定し、標準化調査を用いると良いでしょう。
    ユーザー体験のベンチマーク化の優れているところは、繰り返していくほどに有用性が増していき、デザイン変更の前後の比較や、競合との比較などにおいて、改善点が明らかになっていくことです。

    この記事は、CXLのブログに掲載された「Top 20 A/B Ecommerce Test Ideas」を翻訳したものです。
    • ライター紹介
      ConversionXL

    CXLは米国Austinを拠点とするLPOのコンサルティング会社。
    また、CXLは「CXL Institute」というLPOやWEB解析に特化した、マーケター向けの教育プログラムの運営も行っています。
    欧米のデジタルマーケティング業界ではCXLの創設者Peep Lajaの知名度は非常に高く、Peep Lajaは最も影響力の高いLPOスペシャリストとまで言われています。
    CXLのブログは定期的にLPO関連の非常に参考となるブログ記事を配信しています。

    https://conversionxl.com/

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