月に1回のABテストを5年継続。膨大な知見を蓄積して効果的なサイトに。
〜レオパレス21のABテスト事例〜

月に1回のABテストを5年継続。膨大な知見を蓄積して効果的なサイトに。

反響率を上げるために、サイト内部の改修を重視

賃貸物件の建設から、借り上げ、賃貸管理も

  • ──レオパレス21様の事業をご紹介ください。

    大谷:当社のコアとなる事業は、土地の有効活用を目指しての開発・建設と、賃貸事業、アパート・マンションを建てて借り上げて、貸す事業です。その他、グアムでのリゾート事業、介護施設の運営や介護サービスの提供も行っています。

──DLPOを導入いただいているのは、住まいを探す方が利用する賃貸事業のサイトですね。賃貸事業の特長もご紹介ください。

大谷:賃貸の種類が、通常の賃貸契約と月単位での契約ができるマンスリー契約の大きく2つに分かれ、細かいニーズにも応えられるようになっています。
また、ほとんどの部屋について、家具や家電が備えつけとなっており、当社が貸し主として賃貸するので仲介手数料が要らず、初期費用を抑えて入居できるしくみとなっています。

価格・機能・運用のスムーズさ、総合的にバランスがよい

──御社サイトにLPOツールを導入することになった背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

大谷:LPOツール導入の前に、サイトを大きく改修いたしました。改修前には離脱率の増加や反響率の低下が目立っていたため、基本デザインやテンプレートの変更を行ったのです。
顕著に反響率が伸び、その経験から、広告運用のみではなく、サイト内部の改修を重視するのが、反響率を上げるのに効率がよいと気づきました。

この時に伸びた反響率は、前後比較です。サイト改修を行っていく上で、いつまでも前後比較をしていても数字として信憑性がありません。
そこでLPOツールで細かくテストを実行していくことを決めました。

──LPOツールの中でも特にDLPOを選んだのはどこが決め手でしたか。

大谷:当社では2014年5月からDLPOを活用していますが、当時はLPOツールが世の中にそれほど多く存在していませんでした。
マーケティング関連のパートナー企業である株式会社オプト、クロスフィニティ株式会社の方からご紹介をいただいて、そのまま導入を決めました。

導入後1~2年すると、他社のお話を聞く機会もありましたが、細かいことを質問すると明確な答えが返ってこないことが多くありました。すでに毎月テストを行っており、ABテストにおいてはテストプランニングも大事ですが、そのプランニングをサイトに実装できるかというところが大きな課題になることがわかっていました。
どこまでカスタマイズできるのか、サイト制作をお願いしているベンダーの方々とのやりとりを円滑にできるのかなど、スムーズな運用ができることを重視すると、DLPOが総合的に使いやすいと感じています。

──機能、運用サポート、価格等を総合的に見て、バランスがよく使いやすいという判断ですね。

大谷:はい。中には価格の安いツールのご提案もありましたが、その分、社内での作業工数が増えることが予想され、乗り換えることはありませんでした。

パートナー企業・代理店とチームプレイ、社内は1名体制で

──スムーズな運用が重要というお話がありましたが、現在の運用体制はどのようになっているのでしょうか。

大谷:先ほどもお話しした株式会社オプト、クロスフィニティ株式会社など、複数のパートナー企業と協力しながら進めています。
運用の流れとしては、まずどのようなテストを行うのか課題の抽出を行い、課題に対しての仮説案を作成する。こうしたプランニングは、社内で行うこともありますし、パートナー企業からご提案をいただくこともあります。

仮説案が整ったら、ベンダーに対し、実装が可能か、作業期間がどのくらいになるか問い合わせ、全体で情報共有をします。ここまでで10~15日ほど。その後クリエイティブの作成やコーディングなどの実装作業や動作検証などを15日程度かけます。
そして、10日~12日程度のテスト期間を持ち、パートナー企業にレポートを作成いただき、テストで勝利した案を、実際のサイトに反映させていきます。

全体を45日周期でPDCAを回し、テストを始めた頃に次のプランニングを開始、月に1回のペースでのテスト実施となっています。

  • ──社内では何名くらいがABテストに関わっていますか。

    大谷:基本的に1名で回しています。パートナー企業のサポートのおかげで、1名体制でもストレスなく進めることができます。
    導入当初は、パートナー・代理店に、ベンダーと直接やりとりをしていただき、現在はベンダーでもDLPOに理解が深くなりました。関係者がチームとなって協力しながら運用しています。

──2014年からテストを継続されていますから、かなりの知見が蓄積されたのではないでしょうか。

大谷:はい。全てのテスト結果はリスト化して保存しており、予想が当たらず既存のデザインの方が勝った場合も、知見としてためておくことで、後々役立つことがあります。
仮説を立てる上でも役に立ちますし、テストが思い浮かばないときに、過去のテストを振り返り、「その当時は負けた案であっても、現在のテンプレートでなら結果が異なるかもしれない」という発想からテストをすることもできます。
また、毎月テストをしていると、ボタンデザインや色など、全体のまとまりがなくなってくることがあります。よって、1年に1回程度のペースで、そうしたまとまりのなくなった部分を見直し、再調整することも行っています。
定期的に過去のテストを振り返り見直すことも、よりよいサイトづくりに欠かせません。

同じ訴求内容でもレイアウトの違いで反応は変わる

──テスト内容についてもお聞かせください。具体的にはどのようなテストを行っているのでしょうか。特に反応が出やすいテストはどのようなものですか。

大谷:ボタンデザインや検索条件の文言、予約カレンダー設置の有無、バナーでの訴求内容など、多くの側面から課題を抽出し、テストを行っています。
特に反応が出やすいものとして思いつくのは、レイアウト変更ですね。訴求する内容は同じであっても、どの順番でどのように表示するかで、ユーザーの反応は顕著に変わります。
また、CVに近いところは、ボタンの色・デザイン、文言など、小さなことであっても響きやすい傾向にあります。

──予想と全然違ってしまったテスト結果があれば、それも教えてください。

大谷:PC用サイトで、物件一覧を2カラムから1カラムに変更する方が反響がよいのではと考え、テストを行いました。
多くの工数のかかるテストでしたが、他社のトレンドを見ても、1カラムの方がよいだろうと実行したのですが、負けてしまいました。

──かなり強い根拠を持って仮説を立てても予想と食い違うことがあるのですね。

大谷:そうですね。デザインに関わるところは特に、何をもって「よい」とするのか、感覚によるところが大きく正解はわからないものです。
その点、テストで論理的に何が「よい」のかを決められるのは、わかりやすく効果的だと思います。社内でデザインについて意見が挙がった場合にも説得のしやすさが違います。
とはいえ、個人の感覚というのも大事です。アイディアを出すときに、どこか他のサイトを使って感じたことをヒントにしたり、自分の好きなデザインにある種のこだわりを持ったり、そういう感覚も大切にしてテストに活かしたいと考えています。
「自分がいいと思ったテンプレートが、やっぱり勝った」、そんな自己満足に浸ることも決して悪いことではありません。

  • ──運用面以外では、DLPOを使ってよかったことはあるでしょうか。

    大谷:「あるページを経由したユーザーに対し、この表示をする」というテストは興味深かったですね。たとえば、学生は当社の重要顧客層ですが、学生向けのページを訪れたユーザーに対しては学生用キャンペーンの情報を出すというようなことです。
    ユーザー行動を細かく分析して情報の出し分けができることは面白いと思いました。

──それでは、セグメント分析の機能も積極的に使われているのでしょうか。

大谷:興味深いとは思いましたが、頻繁に活用しているというわけではありません。というのは、テストを行って信憑性のある結果を出すためには、分母がある程度大きいことが必要だと考えるからです。
細かいセグメント分けを行って分母が小さくなれば、テストとしての精度が下がり、結果として効率が悪くなってしまいます。
ただし、ある層を積極的に取り込みたいという目標があるときには、選択肢のひとつとして有効だと考え活用しています。

CROは相乗効果で広告の効率を上げるもの

──長期間、高頻度でABテストを続けてこられましたが、DLPOを使い続ける理由を教えてください。

大谷:DLPOが、ということではなくCRO全体についていえることですが、前提として広告出稿と同じ、その一環という感覚で行っています。相乗効果で広告の効果を上げるものといえます。
サイト内部を適切に改修し続けることで広告の効果を高められると考えています。広告出稿は、スポットのみの選択もあり、各社の方針によるものですから、続けることが必ず重要というわけではありません。
どうしたら、集客を効率よく行えるのか、広告の一環、効果を高めるものとして、ツールを使っていくことが大切だと思います。

──DLPOを使って、もしくはCRO全体での、今後の目標はどのようなものでしょうか。

大谷:現在、外国の方向けには、通常の日本向けのサイトを翻訳して、英語・中国語・韓国語をメインに問い合わせフォームからお問合せをいただける外国語サイトを展開しています。
年々反響が大きくなっており、テストを行えるような分母になれば、外国語サイトでもDLPOを使ってABテストを行いサイト改修を進めていきたいと考えています。

(記事の内容、肩書きなどは2019年4月現在のものです。)