ABテストはテストパターンの作り方によって、いくつかの種類に分けられます。ここではABテストの代表的な4つの手法を、それぞれに適したABテストの実施目的とあわせて紹介します。
ABテストの基本形で、1つのページ内で特定の要素を比較する方法です。たとえば、ファーストビューの画像やキャッチコピー、ボタンの色や形といった細かい部分を変更してテストを行います。一度にテストする要素を1つに絞ることで、どの変更が効果を生んだのかを明確に把握できます。同一URLテストはテストパターンの作成も結果の分析も比較的簡単なため、初めてABテストを行う場合にも取り組みやすいのも魅力です。同一URLテストを通して少しずつ改善を重ねることで、コンバージョン率(CVR)の向上やユーザー体験の最適化を目指します。
事例:エムアイカード
クレジットカードを提供するエムアイカードでは、「WEB明細サービス」の登録率向上を目指し、名称を「紙の明細書STOP!!」に変更してテストを実施しました。その結果、ユーザーにとってわかりやすい訴求が成功し、登録率を大幅に改善しています。
詳細:クリエイティブ訴求の表現を変えただけでCVR30%改善を記録!〜エムアイカードのABテスト事例〜
リダイレクトテストは、異なるURLで構成されたページを比較する方法です。リダイレクトテストが採用されるのは、既存のページに大きな変更を加えるケースや、全体的なデザインやレイアウトをテストしたいケースが代表的です。
リダイレクトテストでは、ユーザーがアクセスした際に異なるURLへ自動的に転送されるため、より広範な変更を検証することができます。たとえば、Aパターンではシンプルなデザイン、Bパターンでは情報量を増やしたデザインにすることで、それぞれのパフォーマンスを比較します。それにより、どのバージョンがユーザーにとって使いやすいか、どのレイアウトがコンバージョン率を高めるかを見極められます。さらに、データ分析ツールを活用することで、効果を具体的に数値化できる点も魅力です。
事例:ワタベウェディング
リゾートウェディングの見積もりページで、ファーストビューのキャッチコピーを「ハワイウェディング」や「リゾートウェディング」などに変えたリダイレクトテストを実施しました。最適なコピーを見つけ、コンバージョン率を大幅に向上させています。
詳細:フォーム誘導220%、来店予約154%の改善を達成!〜ワタベウェディングのABテスト事例〜 - DLPO株式会社
複数ページテストでは、ユーザーがページを移動する際の流れや動線を検証する場合に用いられ、ユーザーが最終的な行動に至るまでの体験を最適化するのに役立ちます。複数ページテストが用いられるケースとして代表的なのは、ECサイトやサービスサイトの申し込みフォームなど、CVが完了するまでに複数ページを遷移する必要があるWEBページです。
複数テストを通して、ユーザーがどのようにページ間を移動するか、どこで離脱しているのかを詳しく確認できます。たとえば、トップページから商品ページ、カート画面、購入完了ページまでの流れを最適化することで、購入率を向上させることが可能です。
また、複数ページテストの結果は全体的な導線設計の見直しに活かせるため、サイト全体のユーザビリティ改善にもつながります。仮説をしっかり立てたうえでテストを行えば、1ページ単位では見えなかった改善ポイントを発見できるでしょう。
事例:スタジオマリオ
子ども向け撮影サービスを提供するスタジオでは、ユーザー属性に合わせた写真をページに表示するテストを実施しました。たとえば、女の子の誕生日撮影を探しているユーザーには、それに関連する画像を表示するよう変更し、コンバージョン率を28.9%向上させています。
詳細:メインビジュアルの出し分けで、CVR28.9%改善を実現!〜スタジオマリオのABテスト事例〜
多変量テストは、複数の要素を同時に変更して最適な組み合わせを見つける手法です。一度に多くのアイデアを試せるので、スピーディーに効果検証をしたい場合に適しています。
メインビジュアルやキャッチコピー、ボタンの色、フォントサイズといった複数の要素を組み合わせてテストするため、一見すると複雑そうに感じるかもしれません。しかし、テスト設計をしっかり行うことで、どの組み合わせが最も効果的かを素早く判断できます。
幅広い選択肢を効率よく試せるため、短期間で大きな成果を狙える一方で、テスト結果の分析には慎重さが求められるため、仮説設計を綿密に行うことが重要です。
参考:ABテストではなく、多変量テストを使用すべき場合とは?
事例:auファイナンシャルサービス
クレジットカードの申し込みを促進するため、まずABテストで効果的な要素を見つけた後、さらに多変量テストで細かい組み合わせを検証しました。ボタンの色、画像サイズ、コンテンツの順序などを調整し、最終的にCVRが119%改善しました。
詳細:ボタン、メインビジュアル、利用イメージの多変量解析でCVR119%改善!〜auフィナンシャルサービスのABテスト事例〜