前回は「AIDAこそ時代を超えた不変の意志決定モデル!」と結論付けた。
しかし20世紀だけは少し事情が異なる。それはこの世紀に大規模生産システムが出現し、分業化が進み、買い手がDesireを感じるタイミングや場所と、Action=購買や消費を行なうタイミングや場所が、人類史上初めて分かれたからで、このミスマッチを解決するために生まれたのが近代広告だった。
広告の役割は「買う時はコレ!」と、商品の良いイメージを生活者の記憶(Memory)に予め刷り込むこと・・・つまりDesireとActionの間の断絶をMemoryで埋め、繋ぐことだった。
なぜなら似たような大量生産品が多数並ぶ店頭において、より多く選ばれるには、商品そのものの差別化以上に「予め知られている!」ということの効果が絶大だったからで、かくして20世紀は「AIDMA」の時代となった訳だ。
さて、このような買い物環境下において、売り手が注目すべきは何か?・・・
私は購買に要する時間の短縮(動物の本能が望む処に近付けること)こそ重要と考えており、それは時短により、購買の量を増やすことや、購買の質を変える(買わないモノを買うようにさせる)ことが可能と考えているからである。
これはテレビ通販や実演販売における「今だけ○○○!」や「限定○○○個!」、店舗における「タイムセール」、ストレスのない買い物を実現させるための動線や商品レイアウトの工夫、テンポの良いBGM、少し明る過ぎる照明、あるいはポイントを突いた端的なPOPの有効性等が目指すところと同じ・・・
改めて断るまでも無いが、何れも「購買における心理変容や、買い物行動自体の時短」を促す打ち手と言える。
インターネットの利点は、文字や画像だけでなく、音声や動画といった様々なフォーマットの情報を同時に伝えられる点で、しかも何れについてもスペースの制限が無い。
そこで売り手は、ついこれらを使い切ることこそ、誠意であり親切。結果的に売上アップにも繋がる!と考え勝ちなのだが、買い手からすると、大量の情報を受け取ったり理解するには多くの時間を費やさねばならず、それらを比較検討するとなれば更に莫大な時間が求められることになるので、実は大迷惑!
何故なら、買い手は「誰の目から見ても非の打ち処のない正しい?買い物」をしたい訳では無く、手っ取り早く済ませ、自分の貴重な時間は、自分にとって、より重要な他の目的に使いたいと考えているからだ。
従って前述のような売り手の努力は、買い手のストレスを増やし、買い物行動からの離脱や先送りを増やすだけ。
本当に売りたいのなら・・・
- 必要最小限の情報に絞って
- 最適な順序(聞き流したり読み飛ばすだけで、整理や比較検討無しに、直感的に判断可能な順序)で
- テンポ良く(端的にストレスなく)伝える
ことこそ最重要!
・・・となれば、その舞台として最も相応しいのはLP!・・・近頃は冗長でファットなLPも増えてはいるが、そもそも即断即決!
買い物行動の時短のために考え出された、究極のアイデアがLPなのだ。
- ライター紹介
後藤 一喜
(ごとう かずよし)
株式会社B2B2C代表取締役社長
金融機関・商事会社・出版社勤務を経て入社した通販会社・カタログハウス社にて同社創業社長・斎藤駿氏の薫陶を受けダイレクト・マーケティングの基礎を学ぶ。
その後、日本初のダイレクト・マーケティング専門広告代理店・電通ワンダーマンダイレクト社に移り、通信や金融、不動産や自動車、産業機械等様々なクライアントに対するサービスの経験を重ね2001年に同社執行役員、その後、電通及びKDDIの合弁会社・ユビキタス・コア社にてメディア・マーケティング部長、電通eM1社(現・電通デジタル)ディレクター室・室長を経て2008年に独立。
“売りたい魂”を持ったマーケッターであることを標榜。著書に『費用対効果が見える広告』(翔泳社)と『マーケッターとデータサイエンティストが語る 売れるロジックの見つけ方 』(宣伝会議)があり、後者はデータアーティスト代表取締役CEO・山本 覚氏との共著。