企業として何かをテストする場合、チームが一丸とならなければいけません。
テストプログラムをフットボールチームに喩えるなら、そのリードはクォーターバックに喩えられるでしょう。
これによりトーンや方向性を決定することができますが、オフェンスラインのサポートが無ければ実質的な得点にはならないわけです。
会社で優れた『オフェンスライン』を得るには、適切な人たちから承認をもらう必要があります。
企業規模が小さい場合、ひとりの人間の承認があればすぐにテストを始められるということもあるでしょう。
しかし大手企業となると、どのように企業の舵取りをしていくかというのは、適切な統計的パワーを理解するのと同じくらい重要なことなのです。
すると最初のステップは、どのようにして『最適化』というものを売りにするかを考えるということになります。
最適化を実践する上では様々な障壁が充分すぎるほどにあるものなので、まずはこうした障壁を打破し、最適化の実践を簡単なことなのだと分かってもらうことが大切なのです。
1. テストとは共に答えを見つけていくことであると強調する
テストとは、科学的な方法で事業上の問題に対する答えを見つけていくプロセスです。
理論的に考えると実に的を射た言葉ですが、実際にそのように考えられる人は多くありません。多くの場合、
人は答えを持っていなければならず、その答えが合っているか間違っているかで報酬か罰かが決まると考えてしまいます。
テストを行うことを、こうしたストレスに対する緩衝材として捉えるように言いましょう。
私たちの誰もまだ答えを持っていません。しかし優れたアイデアは持っています。こうしたアイデアの全てが等しく重要で、テストを行うことで問題を共に解決していくのがテストを行うということなのです。
誰か特定の人間の意見だけが重要視されるということはありません。
2. 仕事が増えるというのは勘違い
最適化や実験というような言葉を聞くと、複雑でおおごとのように感じられるかもしれません。
誰でも既に充分働いていて、これ以上複雑な仕事はしたくないというのが本音でしょう。
しかし、最適化というのは何も難しいことをするわけではありません。特に初期段階は簡単なのです。
ウェブサイトやメールのABテストツールを用いると、テストを実施したり、多くの人が躓くような計算を処理したりすることがぐっと簡単になります。より大きな結果を求めるようになれば、徐々に複雑なテストを行っていけば良いでしょう。
そうする中で、より難しい問題への答えを見つけていけば良いのです。
しかし、とりあえず始めてみて、その良さを理解するという段階であれば、最適化は驚くほど簡単なのです。
最適化を先導していくリーダーとして、適切なツールやシステムを用いることで、とりあえず始めることをできるだけ簡単にしなければなりません。テストのチェックリストのようなものやその他の参考資料などを準備し、プロセスをより円滑なものにしましょう。
最初のうちは、できるだけあなたが重荷を背負うことになるでしょう。しかし結果が出始めると、周りの人々もその価値を認めるようになり、自然にその仕事に興味をもって携わってくれるようになっていきます。
それだけ、数字は雄弁なのです。一度数字で示すことができれば、顧客転換率の最適化チームを編成し、プログラムにより多くの予算を割いてもらえるようになるでしょう。
3. リスクを削減する
テストするというのはリスキーなことであるように感じる人もいます。新しく試すことが上手くいかなかったらどうすれば良いのか。
パフォーマンスの悪いバリエーションのせいで本来得られたはずの売上が得られないということはないか。
しかし、新しいことは常に人を臆病にさせるものですし、危険であるように感じさせるものです。
そのように感じるとしても、実際には最適化によってリスクを減少させることができるという点を強調しましょう。
従業員に対する投資について、有名なジョークがあります。
CFOがCEOに次のように言った。人材に投資をして、その人材が離れていったらどうするんだ?
CEO「投資せずに残られる方が問題だ」
最適化もこれと同じことです。今は上手くいっているように感じられても、知らないだけで実際には存在する『売上を3倍にする方法』があるとしたらどうでしょうか。
その機会損失は大変なものになるでしょう。
優れた企業は、継続的に投資を繰り返し、物事の進め方のより良い方法を模索しています。
前に進み続けなければ後退してしまうからです。最適化は、そうした前進の優れた方法であると言えるでしょう。
価値ある時間やお金を使わずして、アイデアを瞬時に評価し、問題が顕在化する前にその問題を発見することができるのですから。
本当のリスクとは、何が上手くいっていて何が上手くいっていないのか知らないまま、いつか手遅れになってしまうことなのです。
また、最初は規模を小さく始めることもできる点も明らかにしておきましょう。
心配なら、50万人の訪問者数を誇るサイトへのトラフィックをいきなり50/50に分ける必要はありません。そのトラフィックの一部だけでもテストに組み込めば良いのです。
最初は小さい規模で、まずは始めることが大切です。
4. 最適化それ自体ではなく、それから得られる現実的な結果を強調する
実際のところ、最適化などどうでもよく、最適化によりもたらされる結果こそが全てだと考えられています。
ならば、そのように切り出しましょう。
テストというのは、例えばメールの開封率をどれだけ改善できるというようなものではありません。
より多くのリードを獲得できるようにするためのもの、どれだけの商品が売れるか考えるもの、あるいはそれによる収益の増加を扱うものなのです。
彼らにとって、顧客転換率などどうでも良く、その結果として生まれるプラスアルファの利益こそが全てなのです。
最適化の価値を説明しようとするときには、どういった語り口が適切かに常に注意しましょう。
クラシックなマーケティングの格言に『機能を売るな、利点を売れ』とある通りです。
5. 偉大なイノベーターも同じプロセスを辿っている
誰でも『イノベーション』という言葉に甘美なものを感じるものです。多くの企業が自身を『成長の早い新興企業』と称して売り込むのがその証拠と言えるでしょう。最適化は、そのイノベーションを現実のものとするためのチャンスでもあるのです。
社内の誰かを捕まえて、世界で最もイノベーティブな企業は何か、と訊ねてみましょう。AppleやGoogle、Facebook、Amazonなど、様々な答えが返ってくることが想定されますが、そのいずれもが、テストと最適化というプロセスを辿っているのです。
優れたイノベーターは必ず、古今東西、実験というプロセスを経て偉大なブレイクスルーに至っています。そうした優れたイノベーターの仲間入りを果たしたいなら、最適化は『できればやっておくと良い』というようなものではなく、マストであると言えるでしょう。
6. 最初は説得の必要がない人から始めて、パイロット版のプログラムとして試す
大きな組織になると、内部には最適化の上で協力関係を築くことのできる多くのチームや部門が存在することになります。
そうした中から既に最適化に興味を持っている人や、説得が難しくない人、すぐに協力してくれそうな人を探しましょう。
既に信頼関係を築けている、新しいことに意欲的なチームに注目するのです。とは言え、チーム全体を説得する必要はありません。
ただ意欲的な人員を見つけ、そうした人とパイロット版の企画グループを作るのです。
またこのとき、作業が中途半端にならないようなチームに着目することも重要です。
興味はあるが、実際にテストを完了するのに時間を割けないというような人には注意しましょう。最初のうちはちょっとした成功で充分なので、なかなか動けないチームやプロジェクトにかかずらう必要はありません。
興味があるからといって必ずしも行動に結びつくわけではないのですから。
7. 上層部からスポンサーを得る
本当の意味でプロジェクトを軌道に乗せるには、社内のインフルエンサーの力が必要です。
そうした人たちはあなたの取り組みを正当なものとして評価し、あなたが抱えている問題や障壁を打破するだけの後押しをしてくれることでしょう。
ここでも重要なのは、あなた自身、またはあなたがよく知る第三者が信頼関係を築いていて、かつ新しいことに挑戦する気概のある人に注目することです。この記事のこれまでの内容を踏まえて、最適化のメリットを強調しましょう。
そして最も重要なのは、最初は小規模で、リスクも小さく、それほど労力も必要とせずに、徐々に展開していくことができるということを説明することです。
ちょっとした利点やアドバンテージを得るため、小規模なテストを行いましょう。より大きな仮説をテストし始めるための簡単な道筋を見つけるのです。
既に抱えている問題を見つけ、最適化を通じてその問題の解決策がどのように示されるかということを説明しましょう。
そして、結果として分かったこと、特にパフォーマンスに関連する堅実な数値としてレポートにまとめて報告しましょう。
そうすれば、きっと上層部からのゴーサインを得ることができるはずです。
最後に
以上のようなステップを通じて、最適化を行う上での文化的土台を形成することができます。まとめると、以下のようになります。
- 最適化は共に答えを見つけていくプロセスであると強調する
- 仕事が増えるというようなことではないと説明する
- 実際にはリスクを軽減できるのだということを説明する
- 最適化それ自体ではなく、そこから得られる結論を強調する
- 最もイノベーティブな人たちは実験を通じてそれに至ったと説明する
- 最初は説得の必要がない人たちから始めて、パイロット版の最適化計画を実施する
- トップからのお墨付きを得る
最適化というのは多くの人が関わるプロセスです。セールスポイントを理解し、最適化についてパイロット版のテストを行ってくれるチームを見つけ、社内のインフルエンサーからのお墨付きを得ることで、必要な土台をきっと得ることができるでしょう。
- ライター紹介
ConversionXL
CXLは米国Austinを拠点とするLPOのコンサルティング会社。
また、CXLは「CXL Institute」というLPOやWEB解析に特化した、マーケター向けの教育プログラムの運営も行っています。
欧米のデジタルマーケティング業界ではCXLの創設者Peep Lajaの知名度は非常に高く、Peep Lajaは最も影響力の高いLPOスペシャリストとまで言われています。
CXLのブログは定期的にLPO関連の非常に参考となるブログ記事を配信しています。
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