【ABテスト事例】アクションボタンの工夫で寄付を多く集めるには?

検証の詳細

慈善団体にとっては、寄付を募る適切な方法を発見することが重要です。あまりに積極的に要請をすれば、潜在的な寄付者を逃してしまうリスクがあります。
プロセスを難しくしすぎれば、人々は面倒に感じてしまいます。まったく要請をしなければ、人々は何も寄付してくれないでしょう。
こうした事情から、寄付の要請方法を最適化するための方法を検証することには大きな意義があります。そしてそれを実行したのが、世界中の貧困と苦難を乗り越えることを目指している慈善団体Oxfam Great Britainです。

背景と検証の目的

Oxfam Great Britainは、寄付金の額を増やすという目的に向け、モバイルユーザー向けの四つの募金フォーマットを検証しました。
募金フォームはfooterのモバイルデバイス向けのサイトに掲載されました。四つのフォーマットが検証されました。

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A: 寄付のオプションなし
B:“Donate Now”(すぐに寄付をする)という行動喚起(CTA)付きの寄付ボタン(寄付金額などオプションなし)
C: シンプルな寄付フォーム
D: 寄付期間(1回のみ、定期的な寄付)と寄付金額の設定ができるプルダウン+「B」と同じ寄付ボタン

仮説

検証チームは、寄付金額の入力欄を設けることで、寄付者が制約なしに好きな額を寄付することが可能になるので、効果が得られると考えました。
しかし、チームは、自由入力式のフォーマットが最適であるか確信を持てなかったので、四つのバージョンすべてを検証することにしました。

検証の設定

どのバージョンが勝つのかを知るために、チームはアクセスを均等に四つに分けました。合計で1万6000人のユニーク訪問者が訪れ、いずれかのバージョンを閲覧しました。寄付の送金、収益、訪問者あたりの収益がすべてのバージョンで追跡・記録されました。
テスト検証は102日間行われました。

結果

寄付期間(1回のみ、定期的な寄付)と寄付金額の設定ができるプルダウン+寄付ボタンあるバージョン「D」が明確な勝者となりました。
そのバージョンは、「B」“Donate Now”ボタンに比べて、寄付額を23%も増加させました。なおバージョン「B」は、寄付オプションのないバージョン「A」と比べて、寄付額を131%も増加させました。これほど明確な差を示した比較の組み合わせは他にはありませんでした。

分析

バージョンBとDどちらの寄付フォームも、すぐに寄付をするという明確な行動喚起(CTA)の仕組みがあったにも関わらず、入力式のフォーム(バージョンD)では、ユーザーは寄付をする方法について、より高い自由度を感じることができました。寄付における自由度とは興味深い心理学的な原理です。

白紙を提供するように、あまりに多くの自由を与えてしまうと、寄付者はマヒをして優柔不断に陥ります。寄付者はまず寄付をするかを決定し、その後に寄付をする額を決める必要があります。そしてそれから、自分の寄付が公平で、道理に適っていて、役に立つもので、自分の財政事情に合ったものかを判断しなければなりません。
これではあまりに考えることが多すぎます。そうした様々な要素を考えるプロセスこそが、ためらいを生み出します。躊躇したユーザーはコンバートしません。

この検証では、勝者となったデザインは、ユーザーが自分の思ったように行動しているという感覚を十分に与えつつも、寄付者が選択肢に圧倒されないように、オプションの幅を制限していました。
さらに、Oxfamの検証チームは、ユーザーが、選択可能なフォームの透明性を評価すると考えました。だからこそ、バージョンDは他の候補を上回ったのです。

敗者となったCTAボタンのフォーマット(バージョンB)では、“Donate Now”ボタンをクリックした後に何が起こるのか非常に不明確でした。そのため、寄付者はそれほどクリックをする気が起きなかったのです。
検証では世界中からの訪問者が対象となりましたが、80%以上はイギリス在住者でした。しかし、Oxfamは、今回の結果は世界中に共通したものであると考えています。

まとめと応用方法

1. 選択の余地を与えましょう。しかし、あまりに多くの選択肢を与えてはなりません。

選択肢があることは自分に権限が与えられたように感じられる一方で、まったくの白紙状態ではユーザーが当惑して、あまりに多くのことを考え、結局まったくコンバートしなくなります。
選択肢を提供する際には、その数を限定して選択のプロセスをシンプルなものにする方法を考えましょう。今回の例では、寄付するかしないかという選択ではなく、デフォルトの寄付金額欄を用意することで、潜在的な寄付者が適切な額の選択に集中できるようになったのです。

2. 透明性のある仕組みにしましょう。

ユーザーに彼らが何をしようとしているのかを伝えましょう。ユーザーは、ボタンをクリックした後や、もしくはコンバージョンファネルを進んでいくと何が起こるかを明示してくれる、明確で強力な行動喚起(CTA)を与えられた時に、もっとも行動を起こしやすいからです。プロセスを透明なものにすることで、コンバージョン率が向上し、あなたもユーザーも満足の結果につながります。

3. 文化的な差異を考慮しましょう。

今回の検証は主にイギリス在住者を対象として行われました。結果は、例えば北アメリカの人を対象とした場合には違ったものになる可能性があります。
あなたの製品やサービスに関連する文化が、今回のものとどれほど異なるかを考え、それを考慮した上で効果を検証しましょう。

この記事は、海外のABテスト事例配信サイト「Guess The Test」に掲載された記事を翻訳したものです。翻訳元:「Guess The Test
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